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ノベリストにいる異常な作家

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※フィクションです。2ページあります。

 これは警告だ。ノベリストには異常な人物がいる。彼と関わり合いになってはならない。彼の名前と作品名は実際のそれとは変えて書くが、これを読んだ後に彼の小説を読んだならば、すぐに私の指摘する人物であることが分かるように書くつもりなので問題は無いと思う。あえて実際の名前や作品名を記載しないことは私の身を守るためでもあるため、ご了承願いたい。

 私は今でこそノベリストで小説を数点投稿しているが、昔はこのサイトに掲載されている作品を読むだけだった。いわゆる「読み専」というやつだ。この話は私が読み専だった頃まで遡る。その頃、私はランキング上位の人気作家の作品を一通り読み終えると、次は「ゾンビ作品探し」がマイブームとなった。ゾンビ作品とは、最近書かれたものでもない、人気作家が書いたものでもない、人気作品でもない、そのため、ノベリストに掲載はされているものの、完全に埋もれて、もはや誰もアクセスしないような作品のことを指す。私はゾンビの中でも、特にアクセス数の少ないものを好んで読んだ。
 それは、自分が名作を探してやろうという気持ちと、迷作を探してみようという、ちょっと茶化したような気持ちだった。探す方法は、適当な言葉を入れて検索してみたり、あるカテゴリーの小説の特に古いものを見てみる、等といったやり方で行った。
 そうやってゾンビを探すこと数日、私は奇妙な作家を発見した。渡辺義人というその作家は、二点の作品を掲載していた。「僕の日記」と「僕の楽しみ」という二点の作品だった。目を引いたのはそのページ数とアクセス数だ。双方ともにページ数は100に迫ろうとしている、にもかかわらずアクセス数は双方とも一桁だった。私は興味を引かれ、「僕の日記」を読んでみた。それは本当にただの日記だった。小説サイトではなく、ブログで書けばいいではないか、と思うようなただの日記だ。作者は事務員をしているようで、それらしく日記の内容も全く驚くようなことがなく、平凡だった。内容自体は驚くことが無かったが、一年近く前からその日記は始まり、現在も更新され続けていることには驚いた。もちろん100ページに及ぶ日記を全部読んだわけではなく、表紙で日記を月別に章分けしてくれていたために、現在も更新されているらしいことが分かったのだが。もはや長編となった日記を、誰も見にこないのに続けるモチベーションというのはどこから来るのだろうかと思った。まるで、その存在をあえて知られないように作品を投稿しているように見えた。

 私はその日から彼の日記を毎日少しずつ読むのが習慣になった。一番古い物から読みはじめて、多い日には一週間分まとめ読みしたり、少ない日には一日分だけ読んだりと、ペースは一定ではなかったものの、毎日読んだ。正直特に面白いわけではなかったが、なんとなく毎日読んだ。理由はもはやなんとなくとしか言いようが無い。最初はコメントやメールをするでもなかったが、平凡な日記を一か月分読み進めたところで、ついにイベントとも言える出来事が起こったので、その際には彼にメールを送った。その日記によると、彼の飼っていたネコが亡くなったという。「私も飼っていた犬が亡くなった時はとても悲しかったです」といった感じのメールを彼に送った。それをきっかけに、私と彼のメールを通じた交流が始まった。彼は日記を読んでいた時に抱いた印象とほとんど変わらない、ごく普通の人だった。だがそのおかげで私は彼と親しくなれた。作家というと、どこか少し変わった人が多いのではないかというのは偏見かも知れないが、ともかくも、そんな変わった人だったら親しくはなれなかったと思う。

 そうして頻繁に彼とメールでやり取りしながらも、彼の日記を毎日読むという日が続いた。メールでの話題は他愛もない物で、日記の感想の他に、趣味の話や、最近行っておいしかったお店、仕事のことなど、本当にただの雑談だった。
 しかし、彼の日記を三ヶ月分程読み進めた頃、私はある違和感を覚えた。
 一月目には彼の飼っていたペットが死んだ。
 二月目には近所でよく見かけたノラ猫が死んでいるのを見たという。
 三月目には近所の小学校で飼っているウサギが殺されたらしいという。
 自分の身の回りで、そんなに動物が死ぬものだろうか。私は毎日少しずつ日記を読んでいたのだが、ある日、斜め読みで一気に日記を先まで読んだ。すると、やはり月に一回程のペースで彼の身の回りでは何かしらの動物が死んでいた。ますます違和感が強くなったが、だからと言って、そんなことはあり得ないという程のことでもないようにも思えた。自分の心の中にもやもやとしたものが残った。そんな時ふと思った。そういえば、私はまだ彼の二つある作品のうちの一つを読んでいないと。「僕の楽しみ」と題されたその作品はどのような内容なのだろうか。そこで「僕の楽しみ」という作品にアクセスしてみると、それはいくつかの章からなる作品で、「第一章 猫」「第二章 猫」「第三章 ウサギ」「第四章 犬」・・・といったように続いていた。嫌な感じがした。とりあえず第一章を読んでみた。その内容は、主人公が飼っている猫を延々と虐待し、殺害するという内容だった。第二章以降は読む気にもならなかったし、読めなかった。

 その時点で、私は「僕の日記」がブログではなく小説サイトに投稿されている意味を理解した。すなわち、彼の作品は二つで一つなのである。「僕の日記」と「僕の楽しみ」を同時に読み進めることにより、まるで実在の人物が動物を虐待して殺害しているかのような読後感を得られるように工夫されているのだ。彼はまるで本物であるかのような日記と、虐待する様子を描いた小説とにより、生々しいホラーを表現しようとしているらしかった。ただしあくまでフィクションのはずだと思った。誰がそんなことを実際にすると思うだろうか。二つの作品を読むことによって、ようやくその作品の構造に気づいた私は、早速彼にメールを送った。「『僕の楽しみ』拝読しました。遅ればせながらようやく、あなたが書いているものがホラー小説であることに気づきました。面白い構想だと思います」と。
 もちろん面白いなどというのは社交辞令で、動物を殺害する様子など、二度と読みたくなかった。次に来た彼からの返事はこうだった。「僕の作品を理解してくれるのはあなただけです。ありがとう。あなたとはとても感性が合うようです。ところで、僕は動物はそろそろ卒業し、次は人間にしようと思うのです。しかし、さすがに人間は一人では大変です。もしよかったら手伝っていただけませんか。あなたなら、きっと僕のよきパートナーになれると思うのです」
 私は彼と関わり合いになるのをやめた。