舞台裏の仲間たち 6~7
そう言って滑り込んだのは、
桐生市から水戸へ向かう国道50号線沿いにある、
裏筑波のドライブインでした。
年が明けた午前1時過ぎに桐生を出てから、ここまでの約2時間、
茜は真剣に前だけを見て運転をしてきました。
どうせ初詣をするのなら思い切って、
茨城県の大洗(おおあらい)海岸で、初日の出を見ようという
ことになりました。
茜のアパートの部屋へ寄って荷物を簡単にまとめてから、一路、
国道50号線を東へ向かって暗い道を走り始めました。
終夜営業の茨城県・裏筑波のドライブインでは、
たぶん同じ目的で東に向かうのであろうと思われる、群馬県や
栃木県ナンバーの車が、駐車場を半分ほど埋めていました。
「居るのは、
ずいぶんと歳が若い連中ばっかりだな。
俺たちが歳年長組かな・・・」
駐車場の様子を見渡してから、
酔い覚ましもかねて、外の空気を吸いに降りることにしました。
勢いよくドアを開けた降りてきた茜が、あっというまに車を半周して、
私の背後へ飛びついてきました。
「おいおい。
お疲れで、胸の小さい反抗期の乙女は、
もう、寝る予定だろう。」
「もったいない!。
若い連中に、これ見よがしに見せつけてやろうよ
こういうのが、渋い大人のデートだぞって。」
「・・・あれ?
初日の出を見に行く予定が、
いつのまに、デートに昇格したのかな。」
「細かい事はいいの、何でも。
とりあえず、売店をのぞきに行きましょうか。
寝る前の、腹ごしらえもしとかないとね。」
「おっ、色気より喰い気だな。」
「あのねぇ・・・
はるばる裏筑波くんだりまで、
喧嘩をするために、やって来たわけじゃないのよ。
カチンとくることばっかり言わないで、もう少し優しく物事を言ってよ。
そりゃぁまあ、お姉ちゃんみたいに綺麗じゃないし、
時絵ママほどの気遣いはできないけれど、
茜だって、女だよ。
まぁいいか、
女としての魅力に欠けるのは、私の怠慢だもんね。
そんなことよりも、
明日と明後日にそなえて、
たっぷりと食料を調達をしておきましょうね!」
「ん、ちょっと待て。
それって・・・もしかすると、
長期戦になるかもしれないっていう意味か?。」
茜が悪戯っぽい笑いを見せてクルリと一回転をした後、
軽くスキップをしながら終夜営業の売店へと消えて行ってしまいました。
こうして始まった茜とのドライブですが、
そのまま茨城県から海岸線を下り、房総半島を一周して
結局、正月の3日まで旅は続いてしまいました。
作品名:舞台裏の仲間たち 6~7 作家名:落合順平