舞台裏の仲間たち 6~7
「あれ? 気に障った。」
「別に・・・」
頬をふくらました茜が、仕方ないもんねと、
ため息をひとつ漏らしてから、
膝に置いたバッグの中へ手を入れ、煙草の箱を取り出しました。
綺麗に塗り直された赤い唇に一本目をくわえると、
こちらには目もくれず、はいと無造作に手渡しました。
車のシガーライターを人差し指と中指、薬指の3本をきちんと
綺麗に揃えながら、奥までしっかりと押しこみました。
「・・・変わってないね、その癖。」
「あら、わたしのことで、
覚えていてくれたことが、残ってたんだ。」
「覚えているよ、
そのシガーライターを押しこむときの癖も、
シャネルNo.5の香りも。
それから、お姉さんよりも胸が小さいと
いつもこぼしていたことも、みんな覚えているさ。
それから・・・」
「もういい。
聞けば聞くほど落ち込むわ。
それよりも運転を代わってくれない?。
軽自動車ならどうってことはないんだけど、図体がでっかいと
乗せてもらうのにはいいけれど、
自分で、転がすとなると、
どうにも気持ちが落ち着かなくて不安なの。」
「酔っ払い運転になっちまうけど、
それでも、いいかい?。」
「かまわないわよ、少しくらいなら。
そんなことよりも、もう眠いだけなの。
深夜勤務が続いたから、ペチャパイの乙女は少し、寝不足なのよ。
そこ、止めるわね。」
作品名:舞台裏の仲間たち 6~7 作家名:落合順平