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舞台裏の仲間たち  4~5

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 じゃあお願いします、といいながら
時絵ママが、裏口から消えてしまいました。
注いでもらったお返しにとビール瓶を持ちあげると、
茜がコップに手を置いて、ふさいでしまいました。


 「お酒は、やめました。
 時絵ママと同じように、その訳は聞かないで。
 でも・・・それじゃあ、あんたが寂しくなるから、
 少しだけ注いで置いて。
 あとで、舐めるから。」


 「なるほど、
 呑むのを辞めると、
 子猫は、舐めるようになるのか。」

 「意地悪・・・」



 その後、もと団員たちが
それぞれに、思い思いの時間で集まり始めました。
座長が現れたのは、宴もたけなわとなりはじめた頃でした。
一人ひとりが好き勝手なことをわめき始めた頃のことで、
時刻は、11時をすこし回っていました。

 
 時絵ママと座長の間で、
暗黙の合図が交わされたような気配もしましたが、
誰も特にそのことには触れず、ふたたび
喧騒が爆発をしました。


 集まったことへの趣旨の説明などはありません。
決意などの表明もなければ、次にこうしょうという提案なども
この場からは一切始まりません。
集まれば彼らは、勝手に次の目標へ向かって歩き始めます。
生まれた時から、そういう雰囲気を大切にしてきた「集団」でした。
「動きさえすれば、おのずと道は、産まれてくる」・・・それが
結成された時からの劇団員たちのスタンスでした。


 「もう、出よう。」


 カウンターの中で、
長い時間を、時絵ママと立ち話しをしていた茜が戻ってきました。
戻ってくるなり、私の耳元で小さく囁きます。
時絵ママが、カウンターの中から片目をつぶって見せて、
「さよなら」と、声は出さずに右手を小さく振りました。



 
 座長に片手をあげて合図をし、
店を出たのは、カウントダウンが始まるすぐ直前でした。


 一歩外へ出た瞬間に、凍りついてしまいました。
三方を山に囲まれた盆地にあたる、桐生独特の深夜の冷え込みです。
凍てついていた空気は、一瞬にして二人を固まらせました。


 寒さに首をすくめた茜が、
あわてて、私の胸の中へ飛び込んできました。
揺れている前髪の下からは、クリクリとした両眼が
悪戯っぽくほほ笑みながら私を見上げてきました。


 「小猫は、迷惑?。」


 「いや、いいさ。
 想定外の、新年になりそうだけど・・・
 とりあえず、
 新年、おめでとう。」


 「うん、よ・ろ・し・く・ね。」


(6)へつづく