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舞台裏の仲間たち  4~5

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 「茜ちゃん、
 少し見ない間に、また綺麗になったわねぇ。
 まだ皆さんは、お見えになりませんが、はい、どうぞ。
 あら・・・たしか、石川さん?。
 今でも一年中、半袖シャツスタイルのままで
 お過ごしですか。」

 「はい、どうぞ」と、おしぼりをすすめてくれた時絵ママが、
ちらりと意味ありな雰囲気で茜の顔をのぞいてから、私の方へ、
もう一度視線を向けてくれました。


 「いやだぁ、ママったら。
 余計なことは言わないでねぇ。
 そこでたまたま、行き会っただけですから、
 ほんと。
 わたしたち、本当に何でもないんだから・・・」


 「あらそうなの・・・
 本当に、何でもなかったの?
 そうなの。
 まったくいまだに悪戯な子猫だわねぇ、茜ちゃんは。
 はい、じゃあこれ。
 そのまま帰したら、お家で待っている可愛い奥さまに
 石川さんが、寝首を刈られるかもしれません。
 ちゃんと、しっかりと
 落としてあげて下さいね、茜ちゃん。
 はい、温かいほ
うの、
 おしぼり。」

 驚いて、茜が私の首筋を見つめました。
時絵がそう言った通りに、シャツの襟と首筋には、
しっかりと茜のルージュがついていました。



 両手で受け取ったおしぼりの温度を
慎重に確かめた茜が、今度はおそるおそる首筋へ、
「ごめん」を連発しながら、丁寧におしぼりを押しつけました。
再びシャネルのNo.5が、
私の首筋周辺で、甲斐がしく騒ぎ始めました。




 「時絵ママさんは、いつから此処へ?」


 「石川さん。女に、
 過ぎ去った過去のことなんか聴いちゃいけないわ。
 それとも、そういうのがご趣味かしら?
 何で酒場で働いているのかなんて、
 水商売に身を染めている女に
 そんな野暮な事は聞かない方が、身のためです。
 10年もあれば女は変わるわよ。
 10代や20代のときは、他愛のない夢の世界に暮らせても、
 30歳ともなれば、女も現実世界で生きるようになる。
 そんなもんです。」

 「そんなもんですか・・・」



 「そんなものです。
 はい、茜ちゃん、ビールの用意はできました。
 仕出し物の用意ができたようなので、
 ちょっと出かけてまいります。
 少しの時間で戻りますが、あとはお願いね。
 でもね・・・
 いいこと、茜ちゃん。
 もうそれ以上、石川さんにからんんで
 迷惑をかけたりしたら駄目ですよ。
 さかりのついた小猫じゃあるまいし。」