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「舞台裏の仲間たち」 1~3

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『夕鶴』の登場人物は、



「与ひょう」 …雪の田んぼのあぜ道で、矢を打たれて弱っている鶴を
        やさし介抱する。純真無垢な男だが、「惣ど」と運ず」に
        そそのかされて、物欲に目覚めていく。
   
 
「つ  う」 …「与ひょう」に助けられ、恩返しのために、
        与ひょうのもとにお嫁さんとしてやってくる。


「惣  ど」 …隣村に住むずるがしこい村人。金の亡者で、
        「鶴の千羽折り」を、つうが織るように、
        与ひょうをそそのかす。


「運  ず」 …隣村に住む村人。惣どの言いなりなるところがあるが、
        人の良い一面もある。

「子どもたち」…「与ひょう」や「つう」と遊ぶのを楽しみにして
         やってくる。



 この『夕鶴』の上演時間は、最低でも40分はかかりました。
それを、子どもたちとの場面を除いて、
上の4人だけで演じていくわけですから
セリフの量が多く、それも中途半端な長さではありません。

例えば・・・

つう   与ひょう、あたしの大事な与ひょう、
    あんたはどうしたの?あんたはだんだんに変って行く。
    何だか分からないけれど、あたしとは別な
    世界の人になって行ってしまう。
    あの、わたしには言葉も分からない人たち、
    いつかあたしを矢で射たような、
    あの恐ろしい人たちとおんなじになって行ってしまう。 
    どうしたの?あんたは。 
    どうすればいいの?あたしは。

     あたしは一体どうすればいいの?
    …あんたはあたしの命を助けてくれた。
    何のむくいも望まないで、ただあたしをかわいそうに
    思って矢を抜いてくれた。
    それがほんとうに嬉しかったから、
    あたしはあんたのところに来たのよ。
    そしてあの布を織ってあげたら、
    あんたは子供のように喜んでくれた。
    だからあたしは、苦しいのを我慢して何枚も何枚も
    織ってあげたのよ。




     それをあんたは、そのたびに
    「おかね」っていうものと取り替えて来たのね。
    それでもいいの、あたしは。あんたが「おかね」が好きなのなら。
    だから、その好きな「おかね」がもうたくさんあるのだから、
    あとはあんたと二人きりで、
    この小さなうちの中で静かに暮らしたいのよ。
    あんたはほかの人とは違う人。
    あたしの世界の人。
    だからこの広い野原のまん中で、そっと二人だけの世界を作って、
    畠を耕したり子供たちと遊んだりしながらいつまでも
    生きて行くつもりだったのに… 
    だのに何だか、あんたはあたしから離れて行く。
    だんだん遠くなっていく。
    どうしたらいいの?
    …ほんとにあたしはどうしたらいいの? …

     (新潮文庫『夕鶴・彦市ばなし』木下順二 著、P136~137より)