凶作
「はっ、何打その言い草は!お前たちはな、わしの苦労がわかるのか、昔は良かった、今と比べればな!収入は安くとも農作物がこんな生意気な口を利くはずもないんだからな」
なすはそれを聞きますます―その身が赤くなるほど―怒りだした。
「ああ?ああ!?なんだとそんなの手前の勝手じゃねえか!俺たちはななにもできねえんだ。主みたいに殴ることも蹴り飛ばすことだってな。このエコノミークラス症候群が!」
最後はちょっと使い方が間違うほど怒りはそうそうたるものだった。
「あのなあ・・・・・・」
「俺レタスだけど?」
いきなりレタスが入ってきた。
「レタスだけど何なんだ!」
男はものすごく前進力のある、いや突進力のある剣幕で叫んだ。
「・・・・・・うるさいんだけど」
男はこのふざけた調子に気が狂いそうになり、顔は真っ赤も真っ赤になってしまった。そして発狂したように叫んだ。
「ああああああ!!・・・・・・くそっ、お前らといると寿命が縮む!」
男ははき捨てて家に帰っていった。
この後野菜および土地との関係は悪化の一途をたどり。、そして戻ることなく今年は凶作になった。種さえ取れなかった。
しかし彼らは自滅の道を選んだわけではない。その身をもって、鳥を誘い虫を誘い、実を与えることで―少し貧相だったものの―種を運んでもらった。なので彼らの血筋はまだ生きながらえることとなった。
しかしあの男にとって今年は散々たる凶作だったもののまた新しい種でスタートできるのだ。次はいい奴かもしれない。
土地との付き合いは続くもののそのことが慰めとなってくれるに違いなかった。