ぼたん
読んでいくうち、怒りや哀しさなどの感情が溢れるように湧いてきた。
それなのに読み終えて、なんだかすっきりした。
自分が小説の中にいるような気さえ感じていた。
泡沫の話。創作の一部。失恋の短編小説。
…… 返事をかかなくては。
…… いや今でなくてもいいか。
…… 駄目だ。送ろう。
――これからも宜しく――
精一杯書いた。伝わるかはわからないけど心を込めて書いた。
その人から言葉が生まれた。
優しいものの捉え方は変わっていない。
楽しい比喩も不可解な謎掛けも遊んだ言葉もその人だった。
その生まれた言葉は私だけへのものではない。
でも、その言葉を誰よりも身近に感じていたい。
きっと遠く。たぶん遠く。私が行ったことのない街にその人は暮している。
その人とは、一度も会ったことがない。声も、顔すら知らない。
そして、会うことはないだろう。
私は今日も何かを求めてその『ぼたん』をクリックする。
― 了 ―