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鬼ごっこ(仮)

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『それでは、皆さん、A組から体育館を出てください。全員が体育館を出て、五分後、開始します』
ちなみに俺はA組なので、一番先に体育館から出る事が出来た。

よし、最後のクラスが体育館を出てしまうまでまだ結構あるな。だけど…遅いな。
教室棟二階にある俺らの教室で、太郎と待ち合わせをしている。だが、俺達が体育館を出てからもう三分くらい経つ。…このままでは工作を始める前に”鬼ごっこ”が始まってしまう。
「あ、蒼恃くん」
ふと、背後から声がする。振り向くとそこには、俺よりもはるかに背の低く、黒髪のよく似合う可愛らしい女の子、岡本 小海(おかもと こうみ)ちゃん(享年十一歳、死因:交通事故)がいた。ちなみに俺や太郎と同じで、この鬼ごっこに参加するのは二回目。
「あ。小海ちゃん。太郎見かけなかった?」
「あっちの方にいたよ。連れてってあげる!」
そう言って小海ちゃんは廊下を走って行く。俺も小海ちゃんを追って廊下を走る。
50m位走ったところで小海ちゃんは速度を落とし、歩き出す。そして五歩歩いたところで小海ちゃんの足が止まる。
「ここ!」
そう言って指さした先は、『男子トイレ』。
ちなみになぜ、禁止事項に”トイレの一時間以上の利用禁止”とあるのか。それは、”トイレから半径十m”が、鬼の立ち入り禁止ゾーンだからだ。それに、トイレに限って、”鬼の待ち伏せ禁止令”が布かれている。ただし、”トイレを利用できるのは一日三回”。これを破った者も失格となる。そう何度も使用されてはたまったものではないからな。
その話は今は置いといて。なぜ、教室で待ち合わせたはずの太郎が、こんなところにいるのか。しかも、一日三回しか使えない安全ゾーンにいるのか。
足を踏み入れると、それだけでカウントされてしまうので、外から話しかける。
「太郎てめぇ何やってんだ!」
「ちょっとおなかが痛くなって…、ちょっと待ってて。あと3分」
仕方ねえ。待つか…。
ん?そういや…。
「小海ちゃん、逃げなくてもいいのか?」
「え?蒼恃くん、一緒に行動してくれないの?」
「ああ、そう言う事か。うん、いいよ」
そう言った時、放送が流れた。
『最後のクラスが体育館をでました。今から五分後、開始します』
「やべえ!太郎てめえ早くしろ!」
「ちょっと待ってよ!もう少し!」
「くそっ!じゃあ俺達は先にA組に向かう!お前も終わったら早く来い!」
「わかった!」
「よし、小海ちゃん、行こう!」
「うん!」
作品名:鬼ごっこ(仮) 作家名:ざぶ