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鬼ごっこ(仮)

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タイトル:鬼ごっこ(仮)
作者:ざぶ

本文

俺が通う学校は、少し…いや、全然他の学校と違う。どこがどう変わっているか。まず、10000人以上が通っている。クラスはあるが”学年”という区切りが無い。10~19歳までが通う学校。そして他の学校と明らかに違う点。『生徒は全員死者』。

「で、あるからしてー」
先生の話を聞き、真面目にノートをとる生徒。居眠りをしている生徒。隣の席の人と話している生徒。こう書くと”普通”の学校のようだが、それに各々の見た目を追加すると、全然”普通”ではなくなってしまう。
ごつごつとした骨格、真っ赤な顔にぎらぎらと光る目。さらに頭には二本の角。…赤鬼、と言った方が分かりやすいだろう。ちなみに名前は『金剛 力人(こんごう りきひと)』。34歳バツ1。
そんな見た目をした先生の授業を真面目に受けているのは、黒髪ショートヘアで、目の色は黒。身長は152cm。享年13歳。交通事故でこっちの世界に来た『並原 逢(なみはら あい)』。ちなみに、交通事故で死んだからといって、血まみれな訳ではない。こっちに来たら自動的に死ぬ前(事故だったら事故前、病気だったら病気になる前)の”見た目”に戻される。その辺は気遣ってくれているんだろう。
居眠りしているのは『住方 刀祢(すみかた とうや)』。金髪ショートの身長178cm。享年18歳。死因は放火による建物火災。
隣の席の人と話しているのは俺、『川野 蒼恃(かわの そうじ)』。黒髪ショート。身長170cm。享年15歳。死因は失血死。殺人だ。腹にナイフを突き刺された。犯人は既に逮捕され、無期懲役が確定している。
話している相手は『港 太郎(みなと たろう)』。茶髪ショート。身長163cm。享年15歳。死因は心臓発作。
「もうそろそろだな、あれ」
恐ろしい見た目(もう慣れたが)をした先生に気付かれないようにひそひそ話しかける。
「うん、そうだね」
嬉しそうに太郎が返事を返してくる。
あれ、というのは大会の事である。しかしただの大会では無い。俺達の”生き返り”をかけた大会である。
この大会が待ち遠しかった。これでようやく去年の屈辱を晴らす事が出来る。グッと拳を握ったその時、
キーンコーンカーンコーン
授業が終わった。
「よし、じゃあ終わるぞ」
先生の合図に合わせて『日直』(七三分けの身長168cm、享年17歳。死因は不明)が礼をかける。
「きりーつ、礼」
「「「ありがとうございましたー」」」


学校から約500m。その位置にある学生寮第23棟のNO.115。そこが俺の部屋だ。大体、一人暮らしの部屋というと散らかっている、というようなイメージがあるが、ここの寮はそんな事は無い。俺が掃除好きとかそういうわけではない。物が必要無いのだ。
まず、ありとあらゆる家電が必要無い。情報はあっちの世界(一般的にこの世)を覗く鏡さえあれば何でも手に入る。そして俺達は怪我をすることも、血を流す事も、果ては物を触った感覚さえも無い。しかし、物を触る事は出来る。壁を通り抜けることはできない。それに、なぜか睡眠、食事、排せつなどは必要がある。つまり、感覚がない以外は”この世”にいる人間と何ら変わりがない。
そしてこの学生寮のある場所は、俗に言う天国。つまり、学校のある場所も天国。だがしかし、金剛先生は鬼。それはなぜかというと、ただ単に”人手不足”。地獄の人手は十分足りてるらしいが、天国の人手は足りてないらしい。だから天国にいながら先生が鬼、という事になるのである。
…さて、宿題をしますか。
かばんから数学の宿題を出す。この宿題の難しさ…いや、学校の授業は、実年齢(享年+死んでからの年月)に合わせている。俺は死んでから一年経っているから、高校一年生レベルの授業&宿題だ。ちなみに普通科。
宿題が終わった後はいつもの日課であるトレーニング。
超能力強化と筋トレ。
超能力は、全ての幽霊に共通して使える能力。だがしかし、その能力はいろんな分野があり、そしてほぼ無限にある。有名なのでいくと、スプーン曲げ。これは誰でも使える。だがしかし、活用するシーンがない。
俺が得意とする分野は”物体破壊”系。その名の通り、物を壊す事が出来る。レベルの低いものだと、木を破壊するくらい。高くなってくると、ダイヤモンドや固い岩盤なども破壊する事が出来る。今俺は鉄を破壊できるレベル。
筋トレは、一ヶ月後にある”鬼ごっこ”に向け、一年前から始めた。前回とても辛い思いをしたからな…。
さて、やる事はやったし寝ようかな。

「それでは、先生から、明日の”鬼ごっこ”について説明します」
帰りのHRの時間を使って、金剛先生から明日の”鬼ごっこ”について説明される。
この”鬼ごっこ”にこれまでに参加した事のあるやつら(まあ、俺もそれに含まれる訳だが)は、適当に聞き流していた。
金剛先生が言ってた事をまとめるとこんな感じ。
・全生徒11350人が全員参加する。
・鬼は校長以下、68人。
・一週間の期間、行われる。
・逃げ切れたものには、生き返る権利が与えられる。
・捕まった者は”牢屋”に転移させられ、自力では脱出不可。
・夜11時から朝5時までが自由時間。学校から出なければ何をやってもよい。鬼も出現しない。
・生徒間の争いの禁止。
・殺人の禁止。
・一時間以上のトイレの使用、一日三回以上のトイレの使用の禁止。
「えー、それでは最後に。この”鬼ごっこ”の目的は優秀な人物を生き返らせ、社会に貢献させることにある。俺から言わせてもらうとお前たちは全員、優秀だ。絶対に捕まるんじゃないぞ?…特に住方、小野、原岡。お前らはもう今年がラストチャンスだ。絶対に逃すなよ?」
この”鬼ごっこ”に参加するには条件…年齢制限がある。それは、『享年+死んでからの年月』が20年以下であること。今言われた三人は、今年で累計20年。ちなみに俺や太郎は今年も含めあと4回チャンスがある。
「それじゃ、皆。今日は早く寝れよ」
「起立、礼!」
「「「さようなら」」」

「おい、太郎」
帰ろうとしている太郎を呼びとめる。
「どうしたの?」
太郎がこっちに向かって歩いてくる。
「明日の作戦、考えようぜ」
「…そうだね、そうしようか」
俺は去年、大した考えもなしに”鬼ごっこ”に参加していた。が、考えが甘かった。開始早々、教頭に見つかり、捕まった。
今年は去年とは違う。過信しすぎるのもどうかとは思うが、今の俺は超能力が使える。それに仲間もいる。破壊系の能力を持つ俺、それに再生系能力を持つ太郎。少し不安は残るが、今頃フリーのやつはいないだろう。それになるべく大人数になりたくないしな。
「それじゃ、最初はこうすれば…」

そして、あっという間に『明日』は来た。

『これより、毎年恒例である生き残り大会を始めます!この大会で生き残った者全員に、生き返る権利を与えます!』
開会式が始まった。
『ルールは簡単!この学校の範囲内での鬼ごっこです!逃げるのは君たち全生徒11350人、追いかけるのは校長以下、全教員68人!見事一ヶ月間逃げ切れた者に、生き返りの権利を与えます!』
わああ!という歓声が周りから聞こえてくる。一年間、楽しみにイベント。盛り上がって当然だ。
作品名:鬼ごっこ(仮) 作家名:ざぶ