日和
ついにできた。タイムマシン。僕の理論は確実だ。今までだって、いやあの日から俺は失敗をしないできたじゃないか。薄汚れた僕の研究室、目の前にある粉薬、これも同じく様々な薬品を混ぜた、意識を活発化させる薬だ。…非合法ではあるが、この際かまわない。
僕は自らの頭に脳内に電気を送り込む装置を装着し、薬を飲み、この体に電気を流す。
装置はヘルメットのようなものなのだが、電気を流すために他にも色々とくっつけて、更に座れたら便利かなと思い椅子も付けてしまった。結果、まるで僕の作ったタイムマシンは処刑の電気椅子の様な物になってしまった。
まあ、失敗したら死ぬんだからこれはこれでいいかもしれないな
そうこう思ってるうちに体の、背骨に、全身に熱い何かが走った。電気だ。電気はだんだん頭を締め付けるように脳内へ向かっていき激しい痛みを伴いながら僕の視界をブラックアウトさせた。
俺は毎朝忙しいのが腑に落ちない。だって、おかしいじゃないか。一生懸命、勉強していい高校に入ったと思ったら毎朝に講座をしますだなんて。その朝講座のせいで俺は毎朝、5時起床の生活を過ごす事になっちまった。でも、腑には落ちないが、その実、この状況を楽しんでいる。俺は今、人生で始めての淡い恋を経験している。しかも、一目ぼれときた。
その子の名前は久保綾瀬。俺の席の隣で俺と同じ部活で俺と同じ委員会だ。これってめちゃくちゃチャンスだろ。そうに違いない。神様は俺と綾瀬を結婚させたいにちがいない。今は綾瀬のことを
「おい」
とか
「なあ」
とか
「久保」
イマイチな呼び方をしているが、一年もしたら、俺の魅惑のボイスで
「綾瀬」
とか言ってるに違いない。さて、さっそく今日も頑張るか。今は5時3分。57分後には朝講座が始まる。ついでに、俺は綾瀬に会いたくて仕方なくて未だに欠席、遅刻無しの皆勤賞ものだ。
「ふむ。5時3分か…。まあ、悪くないか」
俺の口がかってにしゃべった。え、なんで?
「僕は未来からの使者だよ。前田一期君。」
何、未来の使者
「貴様、俺の体を使って世界征服をするつもりだな!そうはさせねえぞ!こう見えても俺は小学校の頃、持久走で」
「いつも4位だった。だろう」
あれ?なんでコイツに俺の言うことが分かったんだ。
「未来では読心術が普通なのか」
「いやいや、違うよ。僕は覚えているからさ」
覚えている?
「僕は未来の君だ。前田一期、学者さ」
「未来の俺!?学者になんか俺がなれるわけないだろ。さては中学の頃、学力
トップだった」
「水木薫」
「だろう。ってあれ?」
またしてもばれた。
「またしてもばれた。」
くそ、心を読まれてるのか。試してやる。筋肉谷でお芋堀り
「筋肉谷でお芋掘りはしたくないな。そもそも、そんなところはこのころは無かったけどね。」
「未来にはあるのか!」
いや、無いよ。そんなところでできたら僕がなんとしてでも潰す。
「そうか…、未来は一応、平和だな」
それで平和と言うのもなんだな
「うるせえ!つか、お前、さっきから心に直接、話してくんじゃねえか、なんでだ?」
それじゃあ説明しよう。あ、そろそろ出発しないと遅れるよ。俺はその言葉を頭に響かされ急いで家を出た。学校への道の中で未来の俺は難しい専門用語をノリノリで使いまくり色々と言ってきたが、まとめるとこんな感じだったはずだ。
「僕はタイムマシンを作ってここに来たんだよ。それはある狙いがあってだ。まあ、その願いは君が暇なときにじっくりと話すから後にさせてくれ。僕の作ったタイムマシンは脳内の活動を超活発化させて、体に電気を超高速で流し、シナプスなど脳内の機構を過去の自分のものに同調させるんだ。つまり、意識だけを過去の自分に送れるんだ。で、意識を、いや正しくは脳を同調させてるわけだから君の意識に直接話しかけることができるんだよ。まあ、他にも…」
教室に着いた。俺は一番後ろの席だ。
「おはよう」
俺が席に着くと早速、綾瀬があいさつしてきてくれた。
「おはよう」
何故か俺の声は少しながら枯れていた。
「前田君、泣いてるよ。どうしたの」
本当だ。何故か涙が出てる。…ぐすん。おい、犯人はお前か
「ああ、気にしないで。今、俺、未来からの宇宙人に襲われてるんだ」
おもしろい前田君とか言って綾瀬はその場を切り上げてくれた。まったくいつ見てもかわいい綾瀬だ。さて、講座が始まった。
だが、俺は早速、未来野郎に問い詰めなければいけない。おい、どうして泣いてるんだよ。訳が分からんぞ。ごめん。話したら長くなるけどそれでもいいかい。長いってどれくらい長いんだよ。講座の時間ぐらいの長さかな。そうか、ならちょうど良いな。話してくれよ。…綾瀬は明後日死ぬんだよ。
「え!」
講座の途中だってのに大声を出してしまった。周りからの目線が痛い。
「どうした。一期」
「いえ、シャーペンの芯をノックしてしまって思わず・・・。」
全く、気をつけろよと先生は言った。しかし、俺の心はそんなものに注意を払うことすらできないぐらいになっていた。
おい!綾瀬が死ぬってどういうことだ!俺は未来の俺に聞く。あの日、文化祭の日、僕は綾瀬に告白しようと決めてたんだ。だけど、綾瀬は文化祭の出店の材料の買出しに行く最中に車に轢かれて死んじゃったんだよ。
「おい、大丈夫か。一期。泣いてるぞ。お前」
「え、ああ。ハウスダストがひどくて・・・」
げふんげふんと咳払いをする。こういう対応が我ながら上手だな俺。・・・それで、綾瀬を救うためだけにタイムマシンを作ったのかお前。というか、お前が泣くと俺まで泣くから困るんだよ、泣くな。・・・申し訳ない。とりあえず、そのためだけにタイムマシンを作ってのはほんとだ。ついでに今の僕は43歳の独身だ。
「43歳ぃ!」
しまった。思わず声に出してしまった。
「一期・・・、本当にどうかしたのかお前」
「すみません・・・。戸籍上、甥にあたる人の年齢を計算してたら43歳だったのでつい・・・」
どんな言い訳だよ。ついでに今の言い訳は未来の俺が勝手にした言い訳だ。
「・・・複雑な家庭環境で育ってるんだなお前も」
先生に複雑な目線を投げられた。完璧に誤解されたな・・・。クラスメイトの目線も痛い・・・。
まあいい。そんなに綾瀬が好きで仕方ないのかよ、未来の俺。当然さ。どれくらい好きかは今の君が正しく理解してるだろう。
俺は隣に座ってまじめに受講している綾瀬を見る。髪は背中の途中ぐらいまであって、小顔。鼻はくっきりしてるほうで目は優しい感じの二重まぶただ。・・・美しい。そして好きだ。
そういうことさ。流石、僕。見る目がある。
その日、授業は未来からの俺、まあ、めんどくさいから未来とでも言おう、のおかげで楽だった。流石、学者なだけあって博識だ。英語なんてすらすらと読めて驚いた。
放課後、俺は文化祭の準備だ。もちろん、綾瀬と一緒に。
「なあ、久保。写真部の出店のメニューは何にするんだ」
僕は自らの頭に脳内に電気を送り込む装置を装着し、薬を飲み、この体に電気を流す。
装置はヘルメットのようなものなのだが、電気を流すために他にも色々とくっつけて、更に座れたら便利かなと思い椅子も付けてしまった。結果、まるで僕の作ったタイムマシンは処刑の電気椅子の様な物になってしまった。
まあ、失敗したら死ぬんだからこれはこれでいいかもしれないな
そうこう思ってるうちに体の、背骨に、全身に熱い何かが走った。電気だ。電気はだんだん頭を締め付けるように脳内へ向かっていき激しい痛みを伴いながら僕の視界をブラックアウトさせた。
俺は毎朝忙しいのが腑に落ちない。だって、おかしいじゃないか。一生懸命、勉強していい高校に入ったと思ったら毎朝に講座をしますだなんて。その朝講座のせいで俺は毎朝、5時起床の生活を過ごす事になっちまった。でも、腑には落ちないが、その実、この状況を楽しんでいる。俺は今、人生で始めての淡い恋を経験している。しかも、一目ぼれときた。
その子の名前は久保綾瀬。俺の席の隣で俺と同じ部活で俺と同じ委員会だ。これってめちゃくちゃチャンスだろ。そうに違いない。神様は俺と綾瀬を結婚させたいにちがいない。今は綾瀬のことを
「おい」
とか
「なあ」
とか
「久保」
イマイチな呼び方をしているが、一年もしたら、俺の魅惑のボイスで
「綾瀬」
とか言ってるに違いない。さて、さっそく今日も頑張るか。今は5時3分。57分後には朝講座が始まる。ついでに、俺は綾瀬に会いたくて仕方なくて未だに欠席、遅刻無しの皆勤賞ものだ。
「ふむ。5時3分か…。まあ、悪くないか」
俺の口がかってにしゃべった。え、なんで?
「僕は未来からの使者だよ。前田一期君。」
何、未来の使者
「貴様、俺の体を使って世界征服をするつもりだな!そうはさせねえぞ!こう見えても俺は小学校の頃、持久走で」
「いつも4位だった。だろう」
あれ?なんでコイツに俺の言うことが分かったんだ。
「未来では読心術が普通なのか」
「いやいや、違うよ。僕は覚えているからさ」
覚えている?
「僕は未来の君だ。前田一期、学者さ」
「未来の俺!?学者になんか俺がなれるわけないだろ。さては中学の頃、学力
トップだった」
「水木薫」
「だろう。ってあれ?」
またしてもばれた。
「またしてもばれた。」
くそ、心を読まれてるのか。試してやる。筋肉谷でお芋堀り
「筋肉谷でお芋掘りはしたくないな。そもそも、そんなところはこのころは無かったけどね。」
「未来にはあるのか!」
いや、無いよ。そんなところでできたら僕がなんとしてでも潰す。
「そうか…、未来は一応、平和だな」
それで平和と言うのもなんだな
「うるせえ!つか、お前、さっきから心に直接、話してくんじゃねえか、なんでだ?」
それじゃあ説明しよう。あ、そろそろ出発しないと遅れるよ。俺はその言葉を頭に響かされ急いで家を出た。学校への道の中で未来の俺は難しい専門用語をノリノリで使いまくり色々と言ってきたが、まとめるとこんな感じだったはずだ。
「僕はタイムマシンを作ってここに来たんだよ。それはある狙いがあってだ。まあ、その願いは君が暇なときにじっくりと話すから後にさせてくれ。僕の作ったタイムマシンは脳内の活動を超活発化させて、体に電気を超高速で流し、シナプスなど脳内の機構を過去の自分のものに同調させるんだ。つまり、意識だけを過去の自分に送れるんだ。で、意識を、いや正しくは脳を同調させてるわけだから君の意識に直接話しかけることができるんだよ。まあ、他にも…」
教室に着いた。俺は一番後ろの席だ。
「おはよう」
俺が席に着くと早速、綾瀬があいさつしてきてくれた。
「おはよう」
何故か俺の声は少しながら枯れていた。
「前田君、泣いてるよ。どうしたの」
本当だ。何故か涙が出てる。…ぐすん。おい、犯人はお前か
「ああ、気にしないで。今、俺、未来からの宇宙人に襲われてるんだ」
おもしろい前田君とか言って綾瀬はその場を切り上げてくれた。まったくいつ見てもかわいい綾瀬だ。さて、講座が始まった。
だが、俺は早速、未来野郎に問い詰めなければいけない。おい、どうして泣いてるんだよ。訳が分からんぞ。ごめん。話したら長くなるけどそれでもいいかい。長いってどれくらい長いんだよ。講座の時間ぐらいの長さかな。そうか、ならちょうど良いな。話してくれよ。…綾瀬は明後日死ぬんだよ。
「え!」
講座の途中だってのに大声を出してしまった。周りからの目線が痛い。
「どうした。一期」
「いえ、シャーペンの芯をノックしてしまって思わず・・・。」
全く、気をつけろよと先生は言った。しかし、俺の心はそんなものに注意を払うことすらできないぐらいになっていた。
おい!綾瀬が死ぬってどういうことだ!俺は未来の俺に聞く。あの日、文化祭の日、僕は綾瀬に告白しようと決めてたんだ。だけど、綾瀬は文化祭の出店の材料の買出しに行く最中に車に轢かれて死んじゃったんだよ。
「おい、大丈夫か。一期。泣いてるぞ。お前」
「え、ああ。ハウスダストがひどくて・・・」
げふんげふんと咳払いをする。こういう対応が我ながら上手だな俺。・・・それで、綾瀬を救うためだけにタイムマシンを作ったのかお前。というか、お前が泣くと俺まで泣くから困るんだよ、泣くな。・・・申し訳ない。とりあえず、そのためだけにタイムマシンを作ってのはほんとだ。ついでに今の僕は43歳の独身だ。
「43歳ぃ!」
しまった。思わず声に出してしまった。
「一期・・・、本当にどうかしたのかお前」
「すみません・・・。戸籍上、甥にあたる人の年齢を計算してたら43歳だったのでつい・・・」
どんな言い訳だよ。ついでに今の言い訳は未来の俺が勝手にした言い訳だ。
「・・・複雑な家庭環境で育ってるんだなお前も」
先生に複雑な目線を投げられた。完璧に誤解されたな・・・。クラスメイトの目線も痛い・・・。
まあいい。そんなに綾瀬が好きで仕方ないのかよ、未来の俺。当然さ。どれくらい好きかは今の君が正しく理解してるだろう。
俺は隣に座ってまじめに受講している綾瀬を見る。髪は背中の途中ぐらいまであって、小顔。鼻はくっきりしてるほうで目は優しい感じの二重まぶただ。・・・美しい。そして好きだ。
そういうことさ。流石、僕。見る目がある。
その日、授業は未来からの俺、まあ、めんどくさいから未来とでも言おう、のおかげで楽だった。流石、学者なだけあって博識だ。英語なんてすらすらと読めて驚いた。
放課後、俺は文化祭の準備だ。もちろん、綾瀬と一緒に。
「なあ、久保。写真部の出店のメニューは何にするんだ」