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冬野すいみ
冬野すいみ
novelistID. 21783
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飛行機雲の人

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海と飛行機雲


今日は課題はお休みだ。

なにかBに用事があるらしい。Bにも人間的な事情があるんだろうか、と俺は少し不思議な気持ちになった。




朝日の差し込む部屋の窓を開ける。あつい夏の空気が入ってきた。
窓から見る空は相変わらずの晴天で、水不足が心配になるくらいだ。
青い、青い、空。
他の色は忘れてしまったのだろうか。雨はどこに行ったのだろうか。夏空はすべてを飲み込んでしまうかのようだ。
少し怖い。

空の青は好きだ。
けれど、今は海の青が見たい。碧、というのだろうか。

(海に行きたい…)
俺は今朝目が覚めたとき、ふと海のこと思い出した。
俺の住む町から海はそう遠くない。電車に少し乗ればもう海だ。そして、今日、俺は海に行くことに決めた。自転車で海に向かうことにする。自分の力で海までたどり着きたいと思った。

なんだか無性に海が見たかった。











空は快晴。真っ青な空。日に照りつけられたアスファルトは焼けついている。空の水色に木々の濃い緑が鮮やか。圧倒的な太陽。ああ、夏だ。

なんだか目を焼かれそうだ。

暑い太陽の下、俺は自転車を走らせる。熱い、暑い、あつくておかしくなりそうだ。蝉の鳴き声が叫びのように鳴り響く。わんわんと頭に響いていたい。
汗、が流れ落ちる。なんだか涙のようだなと、またおかしなことを思いながら俺は自転車を走らせた。肌が熱されて、息が上がってくるのを、生命活動だと他人ごとのように感じる。
たまに水分補給をするその水の冷たさががとても心地よい。生きている感触はこういうものかもしれないと思った。冷たくて、熱くて、温い。それが命。
太陽は今日も燃えている。
俺の影も走った。

作品名:飛行機雲の人 作家名:冬野すいみ