Choice ~チョイス・その4~
エマの話は生々しく、醜かった。この女、そんなこと考えるイカレタ奴だったんだ。
「そんなことない。私は死ぬべきなのよ。」
ダニエルはまだ泣いている。何なんだよ、このおやじは一体。俺以外、まともな奴はいないな。
よし、考えるぞカイル。ここから出る方法を。
まず、殺すのはエマだ。俺かダニエルがエマを殺す。…いや、俺だな。ダニエルには人殺しが出来ないから。俺がこのイカレ女を殺すのか。じゃあ、どうやってこの鎖を外そう。ナイフじゃ切れない、ノコギリもダメだ。どこかに鎖を外すための鍵が隠されているのか?あの2つの鍵以外に鍵がどこかに?
突然ダニエルが泣き止んで、立ち上がった。
「ここから出るぞ。」
その時、電気が点滅した。
そして放送が鳴る。
>脱出するのに、なかなか手こずっているようだな。それでは、ヒントをあげよう。
>良く聞くんだ。
>鍵、箱、パイプ、流れる、水、鍵。
>鍵、箱、パイプ、流れる、水、鍵。
>それでは、ゲーム再開。
放送が終わった。
「鍵、箱、パイプ、流れる、水、鍵?」
どういう事だ?
「水…、流れる…。あっ!」
ダニエルが何か気付いたようだ。
「水だよ、流れる水。トイレだ、トイレの水を流すんだ。エマ、そのトイレの水を流すんだ。」
ダニエルが、そういうとエマはトイレの水を流した。
ジャーという音が流れると、部屋の天井をぐるりと囲むように走っているパイプからも水が流れる音がした。俺はそのパイプが部屋のちょうど真ん中ら辺で途切れていることに気づいた。その途切れた部分から、大量の汚い水が出てくる。
「おえ。」
吐き気がしたとき、流れ出る水と一緒に何かが出てきた。
「何だ?ダニエル、それ、何だ?」
ダニエルが確かめに行く。
「ただの箱だ。」
「開けてみろ。」
「いや、鍵がかかってる。」
鍵?
「あの、残りの鍵は?」
ダニエルの鎖を外した鍵ではない方の鍵をダニエルが拾う。
自由にダニエルが動くのを見るのは、不快だな。
「開いたぞ。」
嬉しそうに、ニヤつくダニエル。そして、そっと箱を開けた。
ダニエルの顔が曇った。
「何が入ってるんだ?」
ダニエルは俺を見ると、また箱の中を見た。動揺しているよううだった。
そして、箱の中の物を取り出す。
ダニエルは右手に鍵、左手に何かの小さい紙といった格好で俺に見せた。
「その紙は何だ?何か書いているのか?」
「…。」
ダニエルは何も答えずに右手に持った鍵を手から落とし、左手に持った小さい紙切れを両手の指先で持ち、額に押し付け泣き始めた。
何だよ、また泣いてるし。
「おい!その紙は何なんだ!こっちからじゃ、裏側の真っ白い所しか見えないんだよ!」
「キャシー…。」
キャシー?誰だ、それは。
「誰だよ。それに、その紙は?」
「写真だ。私の…あ…。私の友人が…。」
「は?」
ダニエルは震える手で、紙の表側を俺の方に向けた。
「こっち来てくれ。あんたのいるところからじゃ遠くて良く見えねぇ。」
ダニエルは、トボトボと俺の所に近寄ってきた。それから、俺にその写真を手渡した。
それを見た瞬間、俺は驚きに包まれた。
「こいつ…。」
写真の中には、猿轡をかまされ、手足を椅子に固定させられて身動きが取れない状態になっている、あの常連客の女が写っていた。
Am6:00
カイル
作品名:Choice ~チョイス・その4~ 作家名:Sami Sammy