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せき あゆみ
せき あゆみ
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お弁当ものがたり

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卵焼きラプソディー



夫のお弁当を作り続けて幾星霜……。
卵焼きは必ず入れていました。(現在は作っていないので過去形です)

基本は甘いもので、鮭の切り身とのコンビが定番です。

でもワタクシは、いつも同じではつまらなかろうと思いまして、いろいろバリエーションを考えたわけです。

かにかまを真ん中に入れて巻いたり、じゃこと高菜を入れてみたり、洋風にベーコンとチーズを入れたり、鳥や豚肉でピカタにして主菜にしたりと……。

ところがある日あるとき、帰ってくるなり夫はこう言いました。

「卵焼きはあまいのだけでいい」

なんということでしょう!
かわいい(爆)妻の作ったモノに異を唱えるとは!!!!

いいえ、なんのことはありません。
夫は、食には頑固なくらい保守的で「この食材はこの料理法」と決めつけ、それ以外はうけつけない質だったのです。
どうもそれは明治生まれの母親の影響が大のようでした。
母親(つまりワタクシにとっての姑、明治42年生まれ、故人)はよくこう言っていました。
親から食べさせられたものしか口に合わない、と。

ワタクシが変わったモノを作ると、『食べつけないから』といって口にもしませんでした。

結局、食に対してあまり楽しむというか、執着がないということですね。
ワタクシは別段、自分の好みを押しつけませんで、姑には姑の好みのモノを作り、自分が食べたいものは、こっそり別棟でつくって食べました。

そんなわけで、自分の子ども達にも同じようなモノしか食べさせていなかったようで、夫はワタクシと知り合って初めて野菜サラダを食べたといったほどです。

これはワタクシと実家の母親にとっては信じられない出来事で、ワタクシにしろ、母親にしろ、たとえばテレビで変わった料理を見たりするとすぐにチャレンジする質ですので、「これはこうでなくてはならない」といった固定観念は持っていません。
そして、チャレンジした料理が自分の好みの味付けではなかったときには、自分なりに味付けします。
料理って、それくらい楽しめるモノなのに、もったいないですね。

調理方法が一つでいいというのは、ある意味楽でいいですが、作るのを楽しみたい人間にとってはつまらないことです。
でも、その一言以来、ワタクシは甘い卵焼きしか夫のお弁当には入れないことにしました。

作品名:お弁当ものがたり 作家名:せき あゆみ