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暗行御使(アメンオサ)の秘密~燃え堕ちる月~2

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―朴真善はネタン庫の品を漢陽の両班たちに売りさばくだけでは飽きたらず、国外―遠く清国まで運んで売りつけています。
 国王さま、どうか、獅子身中の虫、朴真善を誅殺して下さい。このまま真善を好き放題にさせていては、我が国は今にあの毒虫に内部から喰らい尽くされ、根こそぎ崩れ落ちてしまうでしょう。
 民は一昨年の夏の干魃、豪雨で皆、疲弊しきっております。昨年は都だけでなく地方にも疫病が蔓延し、多くの罪なき者たちが生命を落としました。都はまだしも、地方の惨状は見る眼を思わず背けたいほどの悲惨さを極めております。しかし、真善は右議政という国政を掌る要職にありながら、弱り切った民に救いの手を差しのべるどころか、国の宝物庫であるネタン庫の品を勝手に私物化しているのです。
 聖君として崇め奉る我が国の父、国王さまに伏してお願い申し上げます。どうか、殿下の子たる無力な民をお救い下さい。

 到底、庶民が書いたとは思えない、流麗な手蹟の書状であった。恐らくは下級・中級官吏が現状を見かねて匿名で上奏したものと見当はついた。手紙に独特の言い回しが見られることから、集賢(チツピヨン)殿(ジヨン)の学者(ソンビ)が記したとも思われたが、清宗は、手紙の主を追及せず、この書状についても一切、口外を禁じた。幸いにも、矢に書状がついていたことを知るのは、清宗の側に控えていた老齢の大殿内官と若い内官の二人、更に大殿尚宮他、数名の女官であった。