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暗行御使(アメンオサ)の秘密~燃え堕ちる月~1

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 現に左副承旨を務めてはいるが、その立場は王命の伝達と王への報告を行う承(スン)政(ジヨン)院(イン)の長官たる都承旨の下である。承(スン)政(ジヨン)院(ウォン)自体は、王の意をまず最初に知る部署であるため、極めて重要な部署ではあったが、承旨の権限が余りにも強く、左副承旨は影の薄い存在であった。
 厳密にいえば、ソクチェの立場は長官たる都承旨、更に次官左右承旨の下である。
 ソクチェはもう何年もの間、この副承旨の地位におり、そのことに別段不平を言うわけでもなく淡々と任務をこなしていた。
「余計なことを訊くと思うやもしれぬが、何かあったのか?」
 胸の葛藤を見透かしたかのように問われ、文龍はハッとソクチェを見た。
 一人娘の凛花は、ソクチェが結婚十二年めにやっと恵まれたという。当時、ソクチェは既に三十八歳、三つ下の夫人は三十五歳になっていた。三十五歳での初産は夫人の身体に相当な負担をかけ、予定よりひと月早い出産は数日かかる難産となった。
 産気づいて五日めの深夜、漸く凛花を生み落とした夫人は、ひと夜明けた翌朝に息を引き取った。