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海野ごはん
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これは明け方のバーのマスターの物語

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これは明け方のバーのマスターの物語






深夜の大雪で午前5時だというのに明るかった。
いつもの暗闇が今日は青白い光を放っている。
夏の蛍のような淡い光が町を包んでいた。
僕のお店の中では、疲れた女達と男達がソファーの上でもたれかかるように眠っていた。
先ほどまで、長い冬の夜を嫌がるように騒いでいた男と女達は
電池の切れた人形のように、めいめいが好きな方向を向いて寝ていた。

  

その中で僕と彼女は、まだ眠れずにカウンターで二人飲んでいた。
彼女の友達の誕生パーティーはみんなが寝始めた所でお開きになった  

『マスター、眠たくないの?』
『ああ、なんだか酔いもさめて目も覚めちゃってね』
僕は残ったグラスを拭いていた。
いつも思うけど、パーティーの後や祭りの後はなんだか寂しい。
知らない人間が集まり、その日が最後のように嬌声は混濁の渦にかきまわされ
行き先のわからないパワーとなり、みんなが踊るようにお酒のプールを泳ぐ。
  
バーを長年一人でやっていると、いろんな飲み人が訪ねて来てくれた。
つい、昨日までは知らない人達が、今日は知り合いになって帰る。
天使役じゃないけど、
僕はこの店を開いた事で昨日まで知らない人達を友人にさせる触媒となり、
みんなの運命を少しばかり変えてきたかもしれない。
今、目の前にいる彼女も、
僕が店を開いた事により人生が少し変わった人間かもしれない。