Choice ~チョイス・その2~
Choice1-2
Am3:03
カイル
さぁ、ここから脱出するぞ。
人を殺すんだ。心の準備も必要だな。
「カイル、バスタブの中を。エマもトイレのタンクの中を。」
と、ダニエル。
バスタブの中を見る。黒い袋が入っていた。それをダニエルに見せる。
ダニエルはうなずくと、
「その袋の中身を出すんだ。…だが気をつけろ。危険なものが入っているかもしれない。」
「わかってる。」
袋の中を覗くと、刃物が見た。それを取り出す。
そして、残りの物も。
袋の中身は、ナイフ、時計だった。
これが、脱出に便利な道具?
「ふざけんなっ!」
拳を床に打ち付ける。
横側からガタガタと音が聞こえた。
エマが、タンクの蓋を開けるのに手こずっていた。接着されているのか、簡単には開かないらしい。
ダニエルが何かを見つけた。
「エマ。トイレの後ろにブロックがある。コンクリートのブロックが。」
エマはトイレの後ろからブロックを引きずり出した。重そうだ。
俺はブロックを指さしながら、
「それで蓋を割るんだ。」
エマはブロックを肩までヨロヨロと上げて、蓋をたたいた。
ゴンッ
蓋は割れなかった。力が足りないようだ。
「もっと力を入れろ。」
エマはそう言う俺を見ると少し目を細めた。
そして、今度は頭までブロックを上げる。
細い腕に、筋が浮かび上がった。
ゴンッ
そして、また。
ゴンッ
ガシャンッ
蓋が割れた。
「エマ、良くやった。早く中の物を出すんだ。」
ダニエルが優しく言う。エマはブロックを投げすてると、少しためらった後タンクの中に手を突っ込んだ。
出てきたのは、俺と同じ黒い袋だった。
その中身は、ノコギリと鍵2つ。
俺のよりはるかに便利な物のように見えた。
ノコギリ、鍵。
俺たちの足首に繋がれた鎖は、鍵で外せる仕組みになっていた。あの、鍵で外せるかもしれない。
エマも同じことを考えたんだろう。鍵を外そうとした。
だが、2つの鍵は両方とも合わなかった。
…俺のなら。俺のなら合うんじゃないのか?
「エマ。そのカギを俺の方に投げてくれ。」
エマは鍵を1つずつ俺の方に投げた。
さっそく、鍵を合わせてみる。
…合わない。
も、もう1つの方は…?
「クソッ!合わねぇ!」
ダメだった。
どうやって、これを外すんだ。
「カイル。私にそのカギを投げてくれ。」
ダニエルが膝をついて、両手を広げながら俺に言ってくる。
俺は、言われたとおりに鍵をダニエルに投げようとした。
…いや、待て。
…もし、この鍵がダニエルのにあったら?
あいつは俺を殺すかもしれない。
あいつはさっきからずっと冷静にしている。きっと、どうやって俺を殺すか考えているんだ。エマを殺そうと考えているかもしれないが、確か放送でこう言っていた“2人が脱出できるとは限らない”と。
これはゲームだ。有利な立場に立つことが一番のはず。
それにはまず、この鎖を一番先に外すんだ。
Am3:15
カイル
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Am3:17
ダニエル
「カイル、何をやっているんだ。早く鍵を投げてくれ。」
なぜか、カイルは鍵をこっちに投げてくれない。
「カイル。鍵を。」
カイルは2つ鍵をの握りしめ、こちらを睨んでいる。
そして、口を開いた。
「殺す気だな?」
…こいつ。 そんなことを考えているのか。
「まさか。私は殺したりしない。」
私は全員でここから脱出しようと考えていた。これは、ゲームなんかじゃない。
きっとこれは、心理実験か何かだ。
極限状態に人間を置き、残酷な条件を突きつけて、ルールに従うかどうか試しているんだ。
そうはさせるか。ここから、全員で脱出するんだ。
「さぁ、早く鍵をこっちへ。殺したりなんかするもんか。」
「嘘だ!お前は、ここから出るために俺かそのエマを殺すんだ!」
「違う!これはきっと心理実験か何かだ!!私たちを試しているんだ!!」
「実験!?こんな実験があるもんか!!これはゲームだ!!俺がお前を殺すんだ!!」
カイルは自分の鎖を激しく引っ張る。そして、黒い袋の中から出したナイフで鎖を切ろうとしだした。
鎖は切れそうにない。
「クソッ!!クソッ!!」
「カイル!!いいから鍵を!!」
私たちは叫びながら言い合いになった。
すると突然、エマが言い合いに割り込んできた。
「早く鍵を上げなさいよ、カイル!」
カイルは、驚いてエマを見ながら口を開け固まっている。
「ダニエルさんに鍵をやってあげて。ただ言い合っていたって何もことが進まないじゃない。それに、ダニエルさんの言うとおり実験なのかもしれないでしょ?」
カイルは、私とエマを交互に睨みつけると
「クソッ!」
と叫びながら、私に鍵を1つずつ投げつけた。
やっと、鍵が手に入った。
私は深呼吸をして、1つ目の鍵を合わせる。
…合わない。
もう1つの方は?
カチャ
…外れた!
鎖が外れた!!
私は何かおぞましいものでもはらうかのように、鎖を足から離す。
そして、立ち上がり。カイルの方を見た。怯えているようだった。
殺さないといったのに。
「大丈夫だ。殺したりなんかしない。」
カイルは頭を抱えた。泣いている。
エマの方は。
何か考えているのだろうか、眉間にしわを寄せて一点を見つめている。
さぁ、何をする。ナイフでは鎖は切れない。なら、ノコギリでは?
「エマ、ノコギリで鎖を切ってみるんだ。」
エマは、ハッとし私を見た。それから、ノコギリで鎖を切り始める。
金属どうしの嫌な音が耳を刺激する。
鎖は切れようとしない。
「力が足りないのかも。手伝ってくれませんか?」
エマが、私に頼んできた。
「もちろんだ。」
そう言って、私はエマに近づいて行く。
Am3:30
ダニエル
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Am3:26
エマ
ダニエルさんが、鎖をノコギリで切ってみろと言ってきた。
言われたとおりに鎖をノコギリで切ろうと試みる。
ギーギーとした音がうるさくてたまらない。それに、鎖は切れそうにもない。私の力が足りないのだろうか?
「力が足りないのかも。手伝ってくれませんか?」
ダニエルさんにお願いをする。
「もちろんだ。」
と言って、ダニエルさんが近寄ってきた。私の前にしゃがみこんだダニエルさんに、ノコギリを手渡そうとした。
その時カイルがわざとらしい咳払いをしたので、カイルの方を見ると。カイルは小さく首を横に振りながら、声には出さずに口だけで「気をつけろ。」と言ってきた。
私はダニエルさんが言っていることは嘘じゃないと思っている。でも、私はダニエルさんが嘘をついていても構わない。
Am3:03
カイル
さぁ、ここから脱出するぞ。
人を殺すんだ。心の準備も必要だな。
「カイル、バスタブの中を。エマもトイレのタンクの中を。」
と、ダニエル。
バスタブの中を見る。黒い袋が入っていた。それをダニエルに見せる。
ダニエルはうなずくと、
「その袋の中身を出すんだ。…だが気をつけろ。危険なものが入っているかもしれない。」
「わかってる。」
袋の中を覗くと、刃物が見た。それを取り出す。
そして、残りの物も。
袋の中身は、ナイフ、時計だった。
これが、脱出に便利な道具?
「ふざけんなっ!」
拳を床に打ち付ける。
横側からガタガタと音が聞こえた。
エマが、タンクの蓋を開けるのに手こずっていた。接着されているのか、簡単には開かないらしい。
ダニエルが何かを見つけた。
「エマ。トイレの後ろにブロックがある。コンクリートのブロックが。」
エマはトイレの後ろからブロックを引きずり出した。重そうだ。
俺はブロックを指さしながら、
「それで蓋を割るんだ。」
エマはブロックを肩までヨロヨロと上げて、蓋をたたいた。
ゴンッ
蓋は割れなかった。力が足りないようだ。
「もっと力を入れろ。」
エマはそう言う俺を見ると少し目を細めた。
そして、今度は頭までブロックを上げる。
細い腕に、筋が浮かび上がった。
ゴンッ
そして、また。
ゴンッ
ガシャンッ
蓋が割れた。
「エマ、良くやった。早く中の物を出すんだ。」
ダニエルが優しく言う。エマはブロックを投げすてると、少しためらった後タンクの中に手を突っ込んだ。
出てきたのは、俺と同じ黒い袋だった。
その中身は、ノコギリと鍵2つ。
俺のよりはるかに便利な物のように見えた。
ノコギリ、鍵。
俺たちの足首に繋がれた鎖は、鍵で外せる仕組みになっていた。あの、鍵で外せるかもしれない。
エマも同じことを考えたんだろう。鍵を外そうとした。
だが、2つの鍵は両方とも合わなかった。
…俺のなら。俺のなら合うんじゃないのか?
「エマ。そのカギを俺の方に投げてくれ。」
エマは鍵を1つずつ俺の方に投げた。
さっそく、鍵を合わせてみる。
…合わない。
も、もう1つの方は…?
「クソッ!合わねぇ!」
ダメだった。
どうやって、これを外すんだ。
「カイル。私にそのカギを投げてくれ。」
ダニエルが膝をついて、両手を広げながら俺に言ってくる。
俺は、言われたとおりに鍵をダニエルに投げようとした。
…いや、待て。
…もし、この鍵がダニエルのにあったら?
あいつは俺を殺すかもしれない。
あいつはさっきからずっと冷静にしている。きっと、どうやって俺を殺すか考えているんだ。エマを殺そうと考えているかもしれないが、確か放送でこう言っていた“2人が脱出できるとは限らない”と。
これはゲームだ。有利な立場に立つことが一番のはず。
それにはまず、この鎖を一番先に外すんだ。
Am3:15
カイル
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Am3:17
ダニエル
「カイル、何をやっているんだ。早く鍵を投げてくれ。」
なぜか、カイルは鍵をこっちに投げてくれない。
「カイル。鍵を。」
カイルは2つ鍵をの握りしめ、こちらを睨んでいる。
そして、口を開いた。
「殺す気だな?」
…こいつ。 そんなことを考えているのか。
「まさか。私は殺したりしない。」
私は全員でここから脱出しようと考えていた。これは、ゲームなんかじゃない。
きっとこれは、心理実験か何かだ。
極限状態に人間を置き、残酷な条件を突きつけて、ルールに従うかどうか試しているんだ。
そうはさせるか。ここから、全員で脱出するんだ。
「さぁ、早く鍵をこっちへ。殺したりなんかするもんか。」
「嘘だ!お前は、ここから出るために俺かそのエマを殺すんだ!」
「違う!これはきっと心理実験か何かだ!!私たちを試しているんだ!!」
「実験!?こんな実験があるもんか!!これはゲームだ!!俺がお前を殺すんだ!!」
カイルは自分の鎖を激しく引っ張る。そして、黒い袋の中から出したナイフで鎖を切ろうとしだした。
鎖は切れそうにない。
「クソッ!!クソッ!!」
「カイル!!いいから鍵を!!」
私たちは叫びながら言い合いになった。
すると突然、エマが言い合いに割り込んできた。
「早く鍵を上げなさいよ、カイル!」
カイルは、驚いてエマを見ながら口を開け固まっている。
「ダニエルさんに鍵をやってあげて。ただ言い合っていたって何もことが進まないじゃない。それに、ダニエルさんの言うとおり実験なのかもしれないでしょ?」
カイルは、私とエマを交互に睨みつけると
「クソッ!」
と叫びながら、私に鍵を1つずつ投げつけた。
やっと、鍵が手に入った。
私は深呼吸をして、1つ目の鍵を合わせる。
…合わない。
もう1つの方は?
カチャ
…外れた!
鎖が外れた!!
私は何かおぞましいものでもはらうかのように、鎖を足から離す。
そして、立ち上がり。カイルの方を見た。怯えているようだった。
殺さないといったのに。
「大丈夫だ。殺したりなんかしない。」
カイルは頭を抱えた。泣いている。
エマの方は。
何か考えているのだろうか、眉間にしわを寄せて一点を見つめている。
さぁ、何をする。ナイフでは鎖は切れない。なら、ノコギリでは?
「エマ、ノコギリで鎖を切ってみるんだ。」
エマは、ハッとし私を見た。それから、ノコギリで鎖を切り始める。
金属どうしの嫌な音が耳を刺激する。
鎖は切れようとしない。
「力が足りないのかも。手伝ってくれませんか?」
エマが、私に頼んできた。
「もちろんだ。」
そう言って、私はエマに近づいて行く。
Am3:30
ダニエル
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Am3:26
エマ
ダニエルさんが、鎖をノコギリで切ってみろと言ってきた。
言われたとおりに鎖をノコギリで切ろうと試みる。
ギーギーとした音がうるさくてたまらない。それに、鎖は切れそうにもない。私の力が足りないのだろうか?
「力が足りないのかも。手伝ってくれませんか?」
ダニエルさんにお願いをする。
「もちろんだ。」
と言って、ダニエルさんが近寄ってきた。私の前にしゃがみこんだダニエルさんに、ノコギリを手渡そうとした。
その時カイルがわざとらしい咳払いをしたので、カイルの方を見ると。カイルは小さく首を横に振りながら、声には出さずに口だけで「気をつけろ。」と言ってきた。
私はダニエルさんが言っていることは嘘じゃないと思っている。でも、私はダニエルさんが嘘をついていても構わない。
作品名:Choice ~チョイス・その2~ 作家名:Sami Sammy