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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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青いワンピース

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意識不明のまま搬送されてきた水木さんは、目を覚ますことなく、数日後亡くなった。

最初の入院の時、一旦は手術を試みたものの、手の施しようがなく、そのまま縫合したのだった。
まだ40代の若さ、進行が早かった。

いつだったか、

「あの子が生まれていたら……、あなたと同じ年だわね」

と、寂しそうにつぶやいたことがあった。

一度妊娠したが、流産してしまって、それから子どもができなかったのだという。
そのせいで、水木さんはわたしのことを娘のようにかわいがってくれたのだ。

数日後、水木さんのご主人がわたしに面会に来た。

「女房のものを整理していたら、石井さんにって書いたメモがあって……」

と、いいながら紙包みを手渡された。

開けてみると、青いワンピースが入っていた。
水木さんの手作りだ。
水木さんが来ていたものと似たデザインだが、こちらのほうが袖がふんわりしたパフスリーブになっていて、ウエストもタックが入っていて、緩やかなフレアーになっている。

「娘が生まれたら、おそろいの服をつくって着るんだって、昔言ってたんですよ……もらってやってください」

「ありがとうございます」

わたしは涙があふれて止まらなかった。

「こちらこそ、ありがとう」

ご主人はそう言うと一礼して歩き出した。
わたしは後ろ姿をいつまでも見送っていた。
作品名:青いワンピース 作家名:せき あゆみ