青いワンピース
意識不明のまま搬送されてきた水木さんは、目を覚ますことなく、数日後亡くなった。
最初の入院の時、一旦は手術を試みたものの、手の施しようがなく、そのまま縫合したのだった。
まだ40代の若さ、進行が早かった。
いつだったか、
「あの子が生まれていたら……、あなたと同じ年だわね」
と、寂しそうにつぶやいたことがあった。
一度妊娠したが、流産してしまって、それから子どもができなかったのだという。
そのせいで、水木さんはわたしのことを娘のようにかわいがってくれたのだ。
数日後、水木さんのご主人がわたしに面会に来た。
「女房のものを整理していたら、石井さんにって書いたメモがあって……」
と、いいながら紙包みを手渡された。
開けてみると、青いワンピースが入っていた。
水木さんの手作りだ。
水木さんが来ていたものと似たデザインだが、こちらのほうが袖がふんわりしたパフスリーブになっていて、ウエストもタックが入っていて、緩やかなフレアーになっている。
「娘が生まれたら、おそろいの服をつくって着るんだって、昔言ってたんですよ……もらってやってください」
「ありがとうございます」
わたしは涙があふれて止まらなかった。
「こちらこそ、ありがとう」
ご主人はそう言うと一礼して歩き出した。
わたしは後ろ姿をいつまでも見送っていた。