涙のわけ / 詩のようなもの
無題4
生きてゆくためには
微量の毒がひつようだ
なぜなら
多すぎると死んじまう。
だから という訳でもないが
おれは
禁煙する気は毛頭ない。
ちかごろでは
どこもかしこも禁煙で
息苦しくてしようがない。
「健康」やら「環境」やら
「清潔」やらその他諸々が
デカイ面をして
誰も反対出来ないような「正しさ」なんだから
とばかりに
徐々にこの国を侵蝕している。
どうせ欧米に右ならえしたんだろうが
うかうかしていると
たぶんそのうち
あのあまりに晴れ渡りすぎた 青空の
緊張のはりつめた糸が切れるみたいに
どこかの 見知らぬくらがりで
だれかが そっと
気がふれる。
作品名:涙のわけ / 詩のようなもの 作家名:池本浩一