涙のわけ / 詩のようなもの
私信
あなたの苦しみを目の前にして
わたしは何も言うことができない
憐れみや慰めの言葉
あるいは
勇気づけの言葉さえ
そんなものがいったい何になろう
あなたの苦しみを目の前にして
わたしに出来ることは
ただ黙って視つめること
あなたの苦しみをじっと視つめることだけだ
デクノボウとして
阿呆のように突っ立って・・・
<わたしの想像の触手は あなたの魂に触れ
わたしの想像の耳は
あなたの魂の響きを聴いたような気がする>
だがわたしはあなたを救う術をもたぬ
いかなるスペシャリテも持たぬ
かくして
わたしの非力は打ち上げられたナマコのように
ぶざまにも
白日のもとに露呈するのだ
作品名:涙のわけ / 詩のようなもの 作家名:池本浩一