涙のわけ / 詩のようなもの
マグダラのマリア
マグダラのマリア
最愛の良人に裏切られて
いく多の男を渡り歩いた
いくつもの欲望を受け入れて
くわえ煙草で
バチンコの玉を弾きながら
鉛のような絶望と
砂地に染み込んだ一滴の血
のような悦び
それがあなたの生きる動機だ
レゾンデートルだ
たしかにあなたは
「物語」の渦中にいたのだ
そこであなたは泣き 愛し
笑いさえした
そのころ僕は
フランツ・カフカのKみたいに
見知らぬお城の周りを走り回っていた
おお マグダラのマリア
俺をたすけてくれ
俺をたすけてくれ
作品名:涙のわけ / 詩のようなもの 作家名:池本浩一