Choice ~チョイス~
そして、エマの近くのトイレのタンクの中だ。
>では、ゲームを楽しんでくれ。
心臓がまたバクバクしてきた。
殺す?
殺すだって!?
俺にできるだろうか。
俺は殺されるのだろうか。
恐怖と不安で押しつぶされそうだ。
でも、俺はここを脱出してみせる。
Am3:00
カイル
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Am2:30
エマ
痛い。床がザラザラした感じがこすれて痛い。
ここどこなの?
真っ暗で、何も見えない。
私は床にあおむけに倒れているみたい。
足首がひんやりしていたから、そっと触ってみた。
…鎖?
私、誘拐されたの?
あおむけだと頭が床についてザラザラした感触が痛かったから、体育座りになった。
その時、突然電気がついた。
光が目を刺激する。思わず顔を両膝を抱えた両腕にうずめる。
ちょっと離れた隣の方で、男の人が叫んでる。
うるさい。黙ってよ。怖いのは、あなただけじゃないのに。
もう一人の男の人が…おじさんが、叫ぶ男の人をなだめている。
すごく冷静で、気持が悪いくらいだ。
私は、怖くて声も出ないのに。
叫んでいた男の人の声が小さくなった。
そして、おじさんと自己紹介し合っている。
「…君は?」
…私?
ずっと顔を両腕にうずめていたから、いまいち状況が把握できていなかった。
チラッと横を見ると、男の人がこっちを見ている。
向こう側のおじさんも見ている。
私なんですね。
「わたしは、エマ・ヴァインズ。」
声が震えた。
思わず吐きそうだった。
恐怖でまた顔をうずめた。
小さい時から、怖くなるとこうやっていた。
…ここはどこなの?
「いいか、整理するんだ。この状況を。」
おじさんがそう言った。
でも、頭の中は混乱して。何も考えられない。こんなふうに記憶がないのも初めてなんだから。
>諸君。聞こえるか?
突然放送が流れた。
驚いて、声の聞こえる方に顔を向ける。
天井からだった。
>私は君らとゲームがしたい。簡単なようで、難しいゲームだ。
>これから、6時間以内にここから脱出しろ。だが、容易なことではない。
3人のうち1人を殺さなければならない。そして、脱出できるのが2人とは限らない。
>どうなるかは、君たちの行動次第で変わる。生きたい気持ちで変わるのだ。
>脱出に役立つ、便利な道具を用意しておいた。場所は、カイルの近くのバスタブの中。
そして、エマの近くのトイレのタンクの中だ。
>では、ゲームを楽しんでくれ。
放送が終わり、男の人とおじさんの表情が硬くなっていた。
脱出。
生きたい気持ち。
3人のうち1人を殺せ。
殺す。
私は、後6時間以内に死ぬのかもしれない。
だって、人殺しなんてしたくないし。
…それに、私はこの数年間自殺を考えていた。
Am3:00
エマ
作品名:Choice ~チョイス~ 作家名:Sami Sammy