Choice ~チョイス~
Choice-1
Am2:30
ダニエル
目が覚めると、私は暗闇の中にいた。何も見えない。我が家の寝室ではない。どこかの、床の上にいる。ザラザラした、床の上に。
ここは、どこだ?
どのくらい経っただろうか。不意に電気がつき、目に痛みが走る。ぼやけた視界の先に、何かが見えた。動いているのがわかる。人間だろうか。
目が光になれると、それははっきりと見えた。…人間だ。
私は、長方形型の老朽化して汚くなった広いシャワールームにいた。その人間はどうやら男性で、私と対角線上の角に居る。48歳の私より20歳は若そうだ。
そして、私はその男の隣の角にもう一人いるのに気が付いた。細身で、長くきれいな髪の女性…女の子だ。たぶん、15~20歳くらいだろうか。
長方形の汚いシャワールームに、私と、もう一人の男性。そして、女の子。
2人の男と、少女が三角形に位置していた。
どうなっているんだ。
ここは、どこだ。
「なんだ、ここはどこなんだ!どうなったるんだ!!」
突如、男が叫びだした。立ちながら、叫ぶ男の足元を見ると鎖がつながれていた。まさか、と思い自分の足元に目を落とす。…鎖がつながっていた。激しかった動機が、さらに激しくなった。
だが、不思議と目の前で叫ぶ男を見ていると、冷静にならなければという気持ちが湧きあがってきた。なんせ、私はこの中で一番年上なのだから。
「お、落ち着け。」
男に声をかける。
「はぁはぁ。落ち着け?できるわけないだろ!こんなところに!鎖につながれて!」
「わかる、気持はわかる。だが、まず落ち着け。状況を整理するんだ。どうしてこうなった のか…思い出すんだ。ここまでの経緯を。」
男は息を荒げて口をポカンと開けている。私の話を聞き終ると、唾をのみこんで大きく息をついた。
「はぁ…。そうか、そうだな。すまない。怖くて。」
「いいんだ。気持ちはわかるから。」
男は落ち着き始めた。深呼吸をしている。
男は息を整えると、話し始めた。
「…あんた、名前は?あんた誰なんだ?」
礼儀のない言葉遣いにほんの一瞬ムッとしたが、今はそんなこと気にする状況ではない。
「私の名前は、ダニエルだ。ダニエル・フォスター。君は?」
「俺は、カイル。…カイル・スコットだ。」
目と目でぎこちない握手でもしているような気分だった。
「…君は?」
カイルが少女に話しかけた。
ああ、この子を忘れかけていた。あまりにも小さくうずくまって、長い髪で顔を隠すようにうつむいているから、透明人間のようになっていた。
少女は膝を両腕でだいて、つま先を交差させている。その足首にもまた、鎖が繋がっていた。
少女は、髪を耳にかけ顔を上げた。何とも言えない顔だった。絶世の美人でもないし、TVに出るようなアイドルのように可愛らしい顔でもない。なんとなく、どこか冷めているような、凛とした雰囲気があった。そして、そこに愛らしさが漂っていた。
「わたしは、エマ・ヴァインズ。」
そういうとまた、うつむいてしまった。
「いいか、整理するんだ。この状況を。」
私の、この言葉を境にしばらくの間沈黙がながれた。
数分後、電気が一瞬消えた。途端にまた電気がついた。何かの合図のように。
>諸君。聞こえるか?
当然放送が流れ始めた。天井を見上げるとスピーカーがあった。そこから流れているようだ。
「誰だ。」
カイルが言う。
>私は君らとゲームがしたい。簡単なようで、難しいゲームだ。
>これから、6時間以内にここから脱出しろ。だが、容易なことではない。
3人のうち1人を殺さなければならない。そして、脱出できるのが2人とは限らない。
>どうなるかは、君たちの行動次第で変わる。生きたい気持ちで変わるのだ。
>脱出に役立つ、便利な道具を用意しておいた。場所は、カイルの近くのバスタブの中。
そして、エマの近くのトイレのタンクの中だ。
>では、ゲームを楽しんでくれ。
放送が終わった。
カイルの息がまた、荒くなっている。私も恐怖に倒れそうだ。
どうやら、とんでもなくヤバい状況に置かれてしまったようだ。
…3人のうち、1人を殺す。
まだ、脳が理解し切れていない。
ただ生き地獄になりそうなのは明確である。
Am3:00
ダニエル
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Am2:30
カイル
ここはどこなんだ。
何が起こっている。
心臓がバクバクしている。吐きそうなほどに。
しばらくして、突然電気がついた。
(う、目が痛い。)
わけがわからず、ただ何の意味もなく立ち上がると足元からガチャガチャと音がした。
…足首に鎖が繋がれている。
向こう側には、おっさんがいる。3メートルぐらい先の隣に女の子がいる。
どうなってんだ。
気が付くと、パニックになって叫んでいた。
向こうのおっさんがなだめてくる。何言ってんだ、落ち着けだって?
こんな意味わかんねぇ状況で落ち着けるわけねぇだろ。
「わかる、気持はわかる。だが、まず落ち着け。状況を整理するんだ。どうしてこうなった のか…思い出すんだ。ここまでの経緯を。」
淡々と話すおっさんを見て、だんだんと落ち着いていった。
おっさんの言うとおりにしてみよう。そんなに落ち着いているなら、何か考えがあるんだろうから。
深く深呼吸をする。
整理。整理だな。じゃあ、知ることができることから整理するんだ。
「…あんた、名前は?あんた誰なんだ?」
「私の名前は、ダニエルだ。ダニエル・フォスター。君は?」
これもまた淡々と、冷静に話している。
いったい何を考えているんだ。
「俺は、カイル。…カイル・スコットだ。」
女の子にも聞いてみよう。
細くて、綺麗な長い髪だ。
「…君は?」
彼女は顔を上げてチラッとこっりを見て、おっさんの方もチラッと見た。
きれいな顔だ。美人じゃないが、華がある。
でも、なんだこの冷たい視線。
彼女は小さく、
「わたしは、エマ・ヴァインズ。」
と、だけ言ってまたうつむいた。
おっさんがまた、整理しろと言ってきた。
俺は、どうやってここに来たんだろうか。
思いだせ、思いだすんだ。
しばらく記憶を巡らせていた。
突然、電気がパチっと点滅した。
そして、放送が天井のスピーカーから流れてきた
>諸君。聞こえるか?
「誰だ。」
聞いてみるが、それについての応答はない。
>私は君らとゲームがしたい。簡単なようで、難しいゲームだ。
>これから、6時間以内にここから脱出しろ。だが、容易なことではない。
3人のうち1人を殺さなければならない。そして、脱出できるのが2人とは限らない。
>どうなるかは、君たちの行動次第で変わる。生きたい気持ちで変わるのだ。
>脱出に役立つ、便利な道具を用意しておいた。場所は、カイルの近くのバスタブの中。
Am2:30
ダニエル
目が覚めると、私は暗闇の中にいた。何も見えない。我が家の寝室ではない。どこかの、床の上にいる。ザラザラした、床の上に。
ここは、どこだ?
どのくらい経っただろうか。不意に電気がつき、目に痛みが走る。ぼやけた視界の先に、何かが見えた。動いているのがわかる。人間だろうか。
目が光になれると、それははっきりと見えた。…人間だ。
私は、長方形型の老朽化して汚くなった広いシャワールームにいた。その人間はどうやら男性で、私と対角線上の角に居る。48歳の私より20歳は若そうだ。
そして、私はその男の隣の角にもう一人いるのに気が付いた。細身で、長くきれいな髪の女性…女の子だ。たぶん、15~20歳くらいだろうか。
長方形の汚いシャワールームに、私と、もう一人の男性。そして、女の子。
2人の男と、少女が三角形に位置していた。
どうなっているんだ。
ここは、どこだ。
「なんだ、ここはどこなんだ!どうなったるんだ!!」
突如、男が叫びだした。立ちながら、叫ぶ男の足元を見ると鎖がつながれていた。まさか、と思い自分の足元に目を落とす。…鎖がつながっていた。激しかった動機が、さらに激しくなった。
だが、不思議と目の前で叫ぶ男を見ていると、冷静にならなければという気持ちが湧きあがってきた。なんせ、私はこの中で一番年上なのだから。
「お、落ち着け。」
男に声をかける。
「はぁはぁ。落ち着け?できるわけないだろ!こんなところに!鎖につながれて!」
「わかる、気持はわかる。だが、まず落ち着け。状況を整理するんだ。どうしてこうなった のか…思い出すんだ。ここまでの経緯を。」
男は息を荒げて口をポカンと開けている。私の話を聞き終ると、唾をのみこんで大きく息をついた。
「はぁ…。そうか、そうだな。すまない。怖くて。」
「いいんだ。気持ちはわかるから。」
男は落ち着き始めた。深呼吸をしている。
男は息を整えると、話し始めた。
「…あんた、名前は?あんた誰なんだ?」
礼儀のない言葉遣いにほんの一瞬ムッとしたが、今はそんなこと気にする状況ではない。
「私の名前は、ダニエルだ。ダニエル・フォスター。君は?」
「俺は、カイル。…カイル・スコットだ。」
目と目でぎこちない握手でもしているような気分だった。
「…君は?」
カイルが少女に話しかけた。
ああ、この子を忘れかけていた。あまりにも小さくうずくまって、長い髪で顔を隠すようにうつむいているから、透明人間のようになっていた。
少女は膝を両腕でだいて、つま先を交差させている。その足首にもまた、鎖が繋がっていた。
少女は、髪を耳にかけ顔を上げた。何とも言えない顔だった。絶世の美人でもないし、TVに出るようなアイドルのように可愛らしい顔でもない。なんとなく、どこか冷めているような、凛とした雰囲気があった。そして、そこに愛らしさが漂っていた。
「わたしは、エマ・ヴァインズ。」
そういうとまた、うつむいてしまった。
「いいか、整理するんだ。この状況を。」
私の、この言葉を境にしばらくの間沈黙がながれた。
数分後、電気が一瞬消えた。途端にまた電気がついた。何かの合図のように。
>諸君。聞こえるか?
当然放送が流れ始めた。天井を見上げるとスピーカーがあった。そこから流れているようだ。
「誰だ。」
カイルが言う。
>私は君らとゲームがしたい。簡単なようで、難しいゲームだ。
>これから、6時間以内にここから脱出しろ。だが、容易なことではない。
3人のうち1人を殺さなければならない。そして、脱出できるのが2人とは限らない。
>どうなるかは、君たちの行動次第で変わる。生きたい気持ちで変わるのだ。
>脱出に役立つ、便利な道具を用意しておいた。場所は、カイルの近くのバスタブの中。
そして、エマの近くのトイレのタンクの中だ。
>では、ゲームを楽しんでくれ。
放送が終わった。
カイルの息がまた、荒くなっている。私も恐怖に倒れそうだ。
どうやら、とんでもなくヤバい状況に置かれてしまったようだ。
…3人のうち、1人を殺す。
まだ、脳が理解し切れていない。
ただ生き地獄になりそうなのは明確である。
Am3:00
ダニエル
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Am2:30
カイル
ここはどこなんだ。
何が起こっている。
心臓がバクバクしている。吐きそうなほどに。
しばらくして、突然電気がついた。
(う、目が痛い。)
わけがわからず、ただ何の意味もなく立ち上がると足元からガチャガチャと音がした。
…足首に鎖が繋がれている。
向こう側には、おっさんがいる。3メートルぐらい先の隣に女の子がいる。
どうなってんだ。
気が付くと、パニックになって叫んでいた。
向こうのおっさんがなだめてくる。何言ってんだ、落ち着けだって?
こんな意味わかんねぇ状況で落ち着けるわけねぇだろ。
「わかる、気持はわかる。だが、まず落ち着け。状況を整理するんだ。どうしてこうなった のか…思い出すんだ。ここまでの経緯を。」
淡々と話すおっさんを見て、だんだんと落ち着いていった。
おっさんの言うとおりにしてみよう。そんなに落ち着いているなら、何か考えがあるんだろうから。
深く深呼吸をする。
整理。整理だな。じゃあ、知ることができることから整理するんだ。
「…あんた、名前は?あんた誰なんだ?」
「私の名前は、ダニエルだ。ダニエル・フォスター。君は?」
これもまた淡々と、冷静に話している。
いったい何を考えているんだ。
「俺は、カイル。…カイル・スコットだ。」
女の子にも聞いてみよう。
細くて、綺麗な長い髪だ。
「…君は?」
彼女は顔を上げてチラッとこっりを見て、おっさんの方もチラッと見た。
きれいな顔だ。美人じゃないが、華がある。
でも、なんだこの冷たい視線。
彼女は小さく、
「わたしは、エマ・ヴァインズ。」
と、だけ言ってまたうつむいた。
おっさんがまた、整理しろと言ってきた。
俺は、どうやってここに来たんだろうか。
思いだせ、思いだすんだ。
しばらく記憶を巡らせていた。
突然、電気がパチっと点滅した。
そして、放送が天井のスピーカーから流れてきた
>諸君。聞こえるか?
「誰だ。」
聞いてみるが、それについての応答はない。
>私は君らとゲームがしたい。簡単なようで、難しいゲームだ。
>これから、6時間以内にここから脱出しろ。だが、容易なことではない。
3人のうち1人を殺さなければならない。そして、脱出できるのが2人とは限らない。
>どうなるかは、君たちの行動次第で変わる。生きたい気持ちで変わるのだ。
>脱出に役立つ、便利な道具を用意しておいた。場所は、カイルの近くのバスタブの中。
作品名:Choice ~チョイス~ 作家名:Sami Sammy