鎮魂
それから、ずっとここにいるの。
みんなびしょぬれで、下を向いてるのよ。
知らない人もいるし、知ってる人もいる。
かかちゃんも、ちょっと離れたところにいるし、ばばちゃんも、いた。
でも、弟は見つけられなかった。
いつのまにか、草が周りを見えなくしたけど、
それも、いつのまにか、枯れちゃって、今度は、雪が積もってきて。
そうしてるうちに、人が減っていくのが分かった。
昨日、そこの電柱のそばにいた人も、向こうで下をむいてた人も、いつの間にかいなくなってた。
さすがに、かかちゃんとばばちゃんがいなくなったときには、へこんじゃったよ。
いくらおねーちゃんになったからって、がまん にも げんど ってものがあると思うのよ。
でもね。
でも。
ずっと、ずっと、ととちゃんの呼んでいる声だけは聞こえているの。
すごく、遠いけど、すごくすごく遠いけど、でもね。
それは、ととちゃんの声なの。
ときどき、おにーちゃんの声も聞こえるの。
最初は、泣き声だったけど、このごろ、優しい声になってきたのよ。
あたしね!
ととちゃんの、笑った声と名前を呼ぶときの声が大好きなの!