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母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~ (続)

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 新居での私の日常は、朝早く起きて朝食の支度と徹さんのお弁当作り。菜緒が小学校に行くのを見送ると、その後は次女と長男の面倒をみながら、掃除や洗濯や家の中の片付け。そして昼食の後、午後からは子供たちにお昼寝をさせ、目覚めた時のおやつの用意と洗濯物の取り込み、そして片付け。
 昼寝から目覚めたら子供たちにおやつを食べさせ、その後夕方までの少し時間を、天気の良い日は外で遊ばせた。夕方からは夕飯の支度や、お風呂の用意。そして徹さんの帰りを待ちながら、みんなでテレビを見て過ごした。徹さんの帰りが遅い時は先に食事とお風呂を済ませ、徹さんが帰るまで私だけは起きて待っていた。そんな平凡な毎日が延々と続いていた。

 ――ところが平穏な日ばかりは続かない。

 新築の家に引っ越してしばらく経ったある日。私は朝から激しい頭痛に襲われ、起きることができないでいた。その日は土曜日だった。菜緒は一人で支度をして学校に行き、その前に次女の支度もさせて幼稚園に行かせてくれた。徹さんはもちろん朝早くから仕事。残されたのは私と、幼稚園に上がる前の長男だけ。
 ご飯を食べさせなくちゃいけない。そう思いながらも頭を動かすだけでずきずきと痛む。そう言えば以前にもこんなことがあった。確か菜緒が一歳の頃のことだった。
 ――その日、私の友達と、菜緒と私の三人で市内の商店街の通りを歩いていた。
すると突如、私の足元の道がぐるぐる回り始めた。私は身体の均衡が維持できず倒れそうなったが、異常に気付いた友達が咄嗟に私の身体を支えてくれて、危うく倒れる寸前で抱き止められた。しかし私の足元は回りっぱなしの上に、視界に見えるはずの商店街が見えなくなり、代わりに見えるのは色取りどりのモザイク模様だけになってしまった。最早、友達の顔も菜緒の顔もモザイクでしかない。
激しい吐き気も襲って来てどうしようもない状態になった。私の車で出掛けていたが、運転などとてもできない。友達が、免許はないが運転はできると言って、私たちを家まで連れて帰ってくれた。ちょうど日曜日だったので、すぐに私の父に電話してくれて、驚いた父はすぐに飛んで来て、私を病院に連れて行ってくれた。――偏頭痛の発作だと言われた。かなり重症だったみたいで、一週間は絶対安静にするようにと言われた。菜緒は昼間は保育園に行っていたので、その送り迎えだけは無理を言ってお隣の人にお願いし、私はその間、一人でひたすら寝るしかなかった。日曜日だけは父が菜緒を連れて行ってくれた。
 自分の食事の支度をするのも辛い、しかし菜緒にはご飯を食べさせなくてはならない。辛かった。母親のいない淋しさと辛さを再び味わった。
 ――もし菜緒が大きくなって結婚して、そして子供を産んだ時には、いつでも助けてやれる自分で在りたい――と、ひどい頭痛の頭でそう考えた。