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母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~ (続)

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 その後、次の二級の試験を受講した。敢えなく不合格。ショックだった。
 私の使っているワープロは、最大でも行が二行しか出ない薄型で、その日の入力問題にはやたらと『ソフトボール』という単語が頻繁に出てきて、うっかりするとすぐ行を見間違えてしまい、その度に画面をスクロールしなくてはならなかった。不合格の原因は、正にそのための時間不足に起因していた。
 そこで私は、ワープロを少し大きなタイプの、行も十行くらいは表示できる物に買い替えて、再度二級にチャレンジした。試験が終わったあとの教室でふと見ると、教官だった人が、一人の受講生に在宅の仕事を斡旋していた。そしてその生徒さんは、丁重に断っているではないか。
「これだ!」と思った私は、迷うことなくその教官に声をかけていた。
「その仕事、私します! 私に紹介して下さい。お願いします! ダメでしょうか?」と。今思えば、穴があったら入りたくなるほど恥ずかしくて図々しいことだったのだけど……。
 その教官は、いきなり声をかけた私を見ていささか呆気にとられながらも、
「分かりました。良いでしょう。紹介しましょう」と言って下さった。

 その教官に小さな印刷屋さんを紹介された私は、そこへ面接に行き、何とか在宅入力の仕事をさせて貰えることになった。その時受けたワープロ検定二級の試験は、二度目だというのにみごとに落ちていた。どうやら僅かに合格点に足りなかったようだ。とても残念だったが、それでも仕事が見つかったのだから感謝すべきだろうと思った。
 紹介された青木印刷は横須賀市内にあって、車で行くのにも都合が良かった。 
 在宅ワークの収入は当初の話では、毎月五万~八万位にはなるという話だった。
「これなら行ける!」そう思った私は、前にも増して真剣に家探しをした。そして漸く私たちでも何とか買えそうな家を見つけ、徹さんを必死で説得して、ついに念願のマイホームを手に入れた。
 駅から徒歩十七分、家から三分以内に中学、十分以内に小学校があり、近くには小児科の専門のお医者さんもあった。徹さんの会社へも車で三十分以内だ。
 たった二十坪の小さな土地に立つ、二階建てプラス屋根裏部屋造作可能な小さな可愛い家だった。例えどんなに小さくても初めてのマイホームだし、みんな喜んでいた。契約を交わした時はまだ建築中だったから、私たちは休みの度にその家を見に行った。そして長男が一歳になってすぐの頃、私たちは待ちに待った新居へと引っ越して行った。徹さんと結婚して丸四年が経っていた。