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母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~ (続)

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 時は流れ、菜緒も高校三年生になり、その頃の私には付き合っている人がいた。
 しばらく付き合って、私たちは一緒に暮らし始めた。もちろん菜緒も含めた三人の生活が、新しくて広いアパートで始まった。
 新しいアパートでの生活は快適で、彼は菜緒のことも実の娘のように気に掛けてくれた。しかし、ちょっとしたことが原因で菜緒は家を出ると言い出した。
 自分がいると私の幸せの邪魔になると考えたようだった。
 小さい頃から何度も父親が代わり、その度に其々の父親に懐き、菜緒は菜緒なりに子供らしからぬ努力をして来たのだろう。そしてその時まで、どんなことがあっても離れず一緒に生きてきた菜緒が、ついに私と別れて一人立ちする日がやってきた。
 菜緒はその時まだ高校三年生だった。当時バイトしていた先に頼んで寮に入れてもらったのだった。せめて卒業してから……と、私は思ったのだが、菜緒の決意は固く、程なく私の元を離れて行った。

 私はその後、彼とも気持ちのすれ違いなど色々あって別れ、結局傷ついた心を抱え、田舎の父の元へと帰った。父ももうかなり年老いていて、帰って来て欲しいとのことだったので――。
  私が実家に帰って二年後、最愛の父が逝ってしまった。
 父は他のどの子よりも菜緒を愛していた。
「奈緒が一番可愛い」そう言って憚らなかった。しかし、他の子を愛していなかったわけではない。ただ幼少時に自分の側にいた奈緒に一番の情を感じるのはごく自然なことだったろう。私と菜緒を含めた子供たち四人は、悲しみの中で通夜と葬式を済ませた。私には両親と呼べるものがついになくなってしまった。
 その後、時の流れと共に、親を失うということの寂しさは、歳を経るごとに深まるものだと感じた。