小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

コスモス2

INDEX|1ページ/7ページ|

次のページ
 
コスモス・2


私の家の朝は早い。
 キー、キーというトラックが駐車場に入る音で、私はいつも目が覚める。時計の針の指す時刻は五時十五分。一度目が覚めてしまえば、もう夢の中には戻れない。
 私の家は花屋だ。お父さんとお母さん、それとアルバイトの美由紀さんと梶尾さんの四人という少ない人数だけど、なんとか順調にやっている。
 パジャマの上からパーカーを羽織って、洗面所へ行った。ひんやりと寒いけれど、すでに人気があったことを思わせる独特の空気がある。お湯の蛇口をひねると、すぐにお湯が出た。私はとても丁寧に顔を洗った。最近ニキビが増えてきて困る。
 すでにお父さんもお母さんも、一階の店に出ていて家にはいない。その日の花の仕入れをしているのだ。
 リビングのテーブルには、私のお弁当が置かれてあった。どんなに忙しくても、お母さんは私のお弁当を作ってくれる。仕事がどんなに忙しくても、それを理由に家事は怠らない、それが、お母さんの信念だ。台所へ行って、棚から食パンを取り出してトースターへ入れた。牛乳をマグカップに注ぎ、電子レンジにかける。冷蔵庫からマーマレードジャムを取り出す。トーストにバターは塗らない。
 少し焦げかけのトーストと、ジャム、お砂糖を二杯入れたホットミルクとをテーブルに運んで、テレビをつけた。
 次のニュースをお伝えします。昨日夜、東京都○○区の中学二年生の少年が、学校の屋上から飛び降り自殺をはかり、死亡しました。午後八時半頃、巡回をしていた警備員が、少年が屋上から飛び降りようとしているのを見つけ一〇〇当番通報して、少年にとどまるよう呼びかけましたが、それもむなしく…。
 淡々とニュースを読み上げるアナウンサーの声が響く。
 自殺…
 私はテレビの電源を切った。

 高校まではおよそ三十分、電車で四つ先の駅だ。八時四十分に予鈴がなるので、それまでに余裕を持っていこうと考えても、八時に出れば十分間に合う距離だ。だけど、私はいつも七時十五分には家を出た。
 階段を降りると、そのまま店に繋がっている。店に入ると、お母さんが、なにやらレジのチェックをしているらしかった。私に気付いて、「おはよう」と微笑んだ。
「もう行くの?」
「うん」
「毎朝早いのね。もっとゆっくり寝ていればいいのに」
 トラックの音で目が覚めるんだよ、とは云わなかった。
「今日も持っていくんでしょ」
作品名:コスモス2 作家名:紅月一花