理想と現実(what the hell?)
+α 暗黒と光
彼は沸き立つ怒りでどうしようもならなくなった。しかし、どうすることも出来ない。今彼はコンクリートの上に立ち、ビルがそそり立つ街の中にいる。
そこにはたくさん他人がいて彼の感情は無意識的に抑え込められている。
煮えたぎった心と抑圧が矛盾めいた葛藤を引き起こし遂には景色が薄れていくのを感じた。
だんだん黒が濃くなり残像のようなものも消え失せた。
男は呆然とした。何もないじゃないか。というよりは闇になったのだ。
彼は靴底に固い地面を感じている。それに息もしている。
男がおーい、と叫ぶと耳に手応えを感じたが周囲からいは音など聞こえてこなかった。
すると心が冷めていき次は不安で満たされた。
男は、きょろきょろと辺りを見回し、あちこち走った。そして暴れた。苦しかったのだ。闇には手応えがなく、よっぽど白々しい目を向けられる方がましに感じられた。
男はばたっと倒れ仰向けになった。そうするとすうっと心が落ち着いてきた。苦しみを吐き出したからかもしれない。
男は心が掻き乱されないように落ち着こうと心がけた。俺は明かりを消して眠るところだ、と発想した。 すると何とか安らぎが生まれ固い地面だったものの眠気も出てきた。
すると段々闇が薄れ形が現れる。淡い色になっていき、黒が後退していく。
遂には人が行き交う町が蘇った。人々は寝転がる男にちらちら視線を送っている。
男は嬉しさを塗り潰しやりきれない惨めさを覚えたのだった。
作品名:理想と現実(what the hell?) 作家名:東雲大地