理想と現実(what the hell?)
コンビニ店員の独白
これは悲しいことだし、おかしなことだ。僕は店員で君は客だ。
僕は魯迅の故郷には反発していたんだけどね。
僕と君はこの社会の役割にすっぽり入ってるんだ。 以前は恋人でその前は友達だった。
しかし、しようもない。君は万引きをした。
もし僕が店員でなければ別の形で叱れたのにな。あるいはもっと君に寄り添う形でねじれさせることなくなにか話せたんだ。で、誰かが経済的に叱ればいい。
だけど僕は受話器をもって110番にかけなくちゃならない。
君は媚びるような人ではないし能天気でもないからそうやってうつむいて唇を噛んで。苦しそうだ。
君が悪いけど、でもなんだかな・・・・・・。
僕は笑みなど作れず(作る方が駄目かも)無表情で誰かが出るのを待ってる。
もしかしたら君は僕を恐れているのかもしれない。
なんだか悲しくて嫌だな。そして何故か馬鹿馬鹿しく感じる。何で人情は欠ける(ように見える)んだろうね。そんなものかもしれないけど考えなくちゃ言い切れないよね。
こう知らない人に人生は甘くないって言われるのも辛くてネガティブな程絶望するだろうね。
甘くしないのはその知らない人能天気でもないからちょっとした苛立ちや冷たくなってしまうところにも関係あるんだろうな。
全員友達なら何もひどくはならないような気がするよ。
子供が夢や希望を見てある時にはっと目を見開いてそれらを落としてまた拾うまで時間がかかったりして。
はっとする現実、結構わびしいね。わびさびじゃなくてさ。しようもないけどね。やっぱり悔しくもある。
君じゃなくて他人なら怒るとすればますます悲しいよ。そして切ないな。
そうはしたくなくてもバランスと割り切っても寄り添う人がいなくてはならないし・・・・・・。もっといい方法はないのかな。
まだ出ないな。なかなか出ない。
切ない空気だ。僕らは時として万引き犯を捕える番組を見る。
そして呆れ、怒りもしこんな奴にはなりたくないとも言うかもしれない。さらに捕まり怒られるのを見て爽快感さえ覚えるかもしれない。
今思うとそれは嫌だね。 いずれ君を何時間も大笑いさせる手紙を書こう。 メールじゃアドレス消されてると傷つくから。
ファンシーな封筒に入れれば見てくれるかな。
住所は消せないから良いものさ。それが役目の悲しみへの抵抗になればいいな。
あ、警察だ。・・・・・・。
作品名:理想と現実(what the hell?) 作家名:東雲大地