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同窓会

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加奈




一、乾杯

 ライチに、ビールを注いだ。
「めちゃ久しぶりやな」とライチは笑顔だった。
 ライチはビール瓶を見せて、言った。
「このビール、珍しいねんで、見てみ」
 顔の高さまで上げたビールのラベルを見た。恵比寿さんが鯛を二匹持っている。
「ふつう、ヱビスビールの鯛は一匹やねん。これ、ハッピーヱビスっていうねん」
 そう言って、私のグラスにも注いでくれた。「加奈に、ハッピーヱビス。やで」
 うれしかった。ライチは変わっていなかった。野球をやっていたころの、真っ黒に日焼けした笑顔と坊主頭ではなかったが、スーツを着てワックスで固めたショートヘアが似合っていた。
 ミキが隣に来て、「ライチ、加奈はライチのことが好きやってんで」と笑いながら言った。
「ミキも、幸一がミキのこと、ずっと好きやってんで」
「知ってる。知ってるに決まってるやん、あれだけアピールすれば」
 ミキは大笑いした。
 中学のころと同じ、明るくて大きな声で笑う。
「ちょっと待てって、お前ら、何の話してるねん」
 幸一がやって来て、ライチにヱビスビールを注ぐ。
「アカンて、もうめっちゃ飲んだ。みんな飲みすぎやって」
「何言うてるん、ライチ。もっと飲んで、今日は加奈の事、送って帰らなアカンで」
 ミキがはしゃいで言う。笑うことしかできない私に、ライチは笑顔を見せた。
「こんなに楽しいのん、久しぶりやわ。同窓会っていいな」
 と、ライチに言った。
「三宅にお礼言わな、アカンな」
 幸一が立ち上がって、大声で言った。
「みんな聞いてくれ」
 騒がしかった場内に幸一の声が響いた。みんなが幸一を見た。
 レイジもカツもいた。西脇もいる。アキも、ナカジーもいる。
「今日、めっちゃ楽しい、久しぶりの同窓会を呼びかけてくれたのは、」
 みんな、幸一の言葉に軽く頷いた。
「みんなにはがきを出して、集まれる日を確認したりして、ほんといろいろやってくれたのは、」
 私も頷いた。
「三宅や」幸一が言う。「今日は、突然の用事が出来て、三宅が来られへんようになったけど、ほんと、みんな三宅に感謝しよ」
「そうそう。感謝しよ」「うん三宅、いいやつや」「三宅が言い出せへんかったら集まってないよな」「俺ん所なんか、わざわざ電話してきたよ」「そうそう、いつなら集まれるかってな」「いや、今日はほんとよかった」「また今度、三宅が来れる日に集まろう」
 幸一は、さらに大声で言った。
「みんな、乾杯しよ。三宅に乾杯しよ」
 クラス全員が立ち上がった。
「かんぱーいっ」



「なんで、三宅、来られへんようになったん」
 帰り道、ライチが幸一に聞いた。
 みんなはカラオケボックスへ行った。私とライチ、そしてミキと幸一の四人だけ駅へ向かった。
 三宅と小学校から友達だった幸一は、三宅のお母さんから電話をもらっていた。
「三宅、警察に捕まったよ」
 驚いた。
 様子がおかしいと思ったお母さんが、三宅の机の上にあった詳細に書かれた計画書を見つけた。計画書には、三宅のすべてが記されていた。
「お母さん、泣いてたな。誰にも言うなよ、このこと」
「言えるか、そんな話」
 ライチが答えた。
 私はそっと、ライチの腕に手をまわした。

          終
作品名:同窓会 作家名:子龍