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CROSS 第5話 『忘れてはならぬ戦い』

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第7章 おや? ヤマグチのようすが?



 その敵兵は、広場を見渡すことができる塔の上にいた。敵兵は、持っているボルトアクション式の狙撃銃を伏せた状態で撃っていた。何発かの銃弾が、塔に向かって飛んできたが、敵兵に当たるということは無かった。彼は無言を貫いている。

 そんな彼の狙撃銃のスコープ内に、二人の男女の兵士の姿が映った。男のほうは、落ちていた狙撃銃を拾うと、彼に向かって撃ち始めた。だが、銃弾は全て、呆れるほど変な方向へと飛んでいく。女のほうはショットガンを背中から抜き、撃ち始めた。ショットガンの散弾の鉛玉が何個か塔の外壁にめりこんだ。広場から塔までかなり距離があるにもかかわらず、うまく弾を届かせることができることに、彼は驚いたようだ。
 そこで彼は、男のほうを無視して、女のほうを先に狙うことにした……。



 山口は、大型狙撃銃を狂ったかのごとく撃ちまくっていた。その横では、佐世保がショットガンを撃っている。

   ズキュン!!!

 広場に銃声が響き渡った。その銃声の後、佐世保のショットガンの銃声が途切れた。山口は佐世保のほうをおそるおそる見る。
 するとそこには、佐世保が右肩を押さえてうずくまっていた。致命傷ではないようだが、出血しており、かなり痛そうだ。
 そんな佐世保の姿を見た山口は、激怒するしかなかった。

 すると、山口の身体が水色に光り始め、その光は狙撃銃へと流れていった……。
 少し遠いところで隠れていたガリアやウィルたちや兵士たちにも、その光が目に飛びこんでいく。
「いったい何が始まるんです?」
ガリアの隣りにいた兵士が彼に聞く。
「知るか」
ガリアはそっけなくそう言った。

   ズバシュン!!!!!

 銃声とは思えないほどの轟音が、広場だけではなく町中に響き渡る……。

 その轟音は、塔の上にいた敵兵のところにも遅れて届いたが、その時は頭が破裂して中身をぶちまけている時であった……。言うまでもなく、その敵兵は死んだ……。



 その銃声の後、山口と狙撃銃から光は消えて無くなり、元に戻っていく。だが、山口はゼイゼイと息苦しそうだった。
「山口さん、魔術使えたんですか?」
佐世保が右肩を押さえながら山口に声をかけた。山口は呼吸を落ち着かせながら、
「……勉強したんだよ……」
山口はそう言うと、地面に仰向けに寝転がってしまった。
 そのとき、負傷していた佐世保の元に衛生兵がやってきた。
「私だけでなく、そこにいる山口大尉も診てあげて」
佐世保はそう衛生兵に言った。衛生兵は山口を見るとすぐに、他の衛生兵を呼び寄せた。
 魔術は体力を消費するのだった。しかも、彼は素人で、身体の調子が悪いときに使ったので、それは命に関わるほどだった。