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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼第二部・第二回・弐】小さなこいの唄

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「竜之助ッ!! あんたはまた飲んだコップおきっぱなしでッ!!」
母ハルミの声が栄野家に響いた
「京助ッ!! いい加減起きろっちゃッ!!」
それに続いて響いたのは緊那羅の声
「相変わらずにぎやかですね」
「乾闥婆もう大丈夫なの?」
そんな声を聞きながらお茶をいれる乾闥婆に烏倶婆迦が聞いた
「ええ…大丈夫です。ありがとうございます」
にっこり笑って乾闥婆が返す
「ハッハッハ参った参った」
竜之助が笑いながら茶の間にやってきた
「竜喧嘩しても笑ってるね」
「ん?」
「嬉しそう」
「まぁな…嬉しいぞ」
「喧嘩て嬉しいの?」
烏倶婆迦が首をかしげた
「俺はハルミが好きだからな」
「好きだと喧嘩しても嬉しいの?」
「ああそうだ」
竜之助が笑いながら頷くと湯気のたつお茶が烏倶婆迦の前に置かれた
「熱いですから気をつけてくださいね」
「ありがと乾闥婆」
「竜も飲みますか?」
「ああ、もらおうか」
乾闥婆が急須にお湯をいれていると足音が近づいてきた
「京助」
「おす…」
寝癖頭の京助が脇腹を掻きながら茶の間に入る
「ねぇ京助」
「あ?」
「緊那羅と喧嘩して嬉しかった?」
「は?;」
寝起きにいきなり質問された京助が間の抜けた顔をした
「嬉しい…てか…何だ?; 俺緊那羅と喧嘩してたんか?;」
「さっき起こされてたとき」
「あれは喧嘩してたのではなく起こしてただけですよ烏倶婆迦」
乾闥婆が2つのお茶を入れて竜之助と京助に向けて置いた
「それに…喧嘩するほど仲がいいという言葉もあるんですよ」
にっこりと乾闥婆が笑う
「喧嘩したら仲がいいの?」
「喧嘩ってのは本音で本気のことを言い合うからな。お互い相手に興味がないと喧嘩ってのはできないんだ」
「まぁ本当に嫌なやつには構わねぇから喧嘩云々までいかんわな」
竜之助と京助がほぼ同時に茶を啜る
「好きだからこそ喧嘩するんだ」
「好きだから…」
烏倶婆迦が京助を見た
「…何だよ;」
「なら京助は緊那羅が好きなんだね」
「ブハッ!!;」
「ハッハッハ汚いぞ京助」
「汚いッ!!」
お茶を吹き出した京助の頭をスパンっと乾闥婆が叩いた
「なん…っ;」
キョドる京助が口の端を腕でぬぐっているとガラッと窓が開き乾闥婆がにっこり笑ったまま窓を見るとそこには今まさに窓から入ってこようとしている迦楼羅
「迦楼羅」
その迦楼羅に乾闥婆がゆっくり近づくと手を前に出し思いっきり迦楼羅の触覚のような前髪を掴んで引っ張った
「いだだだだだッ!!; 来て早々何をするッ!!;」
「どうして玄関から入ってこないんですか迦楼羅」
「だってだなっ!!; だっ!!引っ張るなというにッ!!;」
「本当行儀が悪いん で す か ら っ!!」
乾闥婆が笑顔のまま迦楼羅の前髪をこれでもかって位の力をこめて引っ張ると迦楼羅が前のめりで茶の間の中に落ちた
それでもまだギャーギャーと言い合いをしている乾闥婆と迦楼羅
「竜之助ッ!!」
「京助ッ!! 昨日のうちに制服のシャッ出しておけって言ったじゃないっちゃかっ!!」
それに負けない位の母ハルミと緊那羅の声も響く
「みんな仲がいいんだ」
それを聞きながら烏倶婆迦が何かを納得したように頷くと茶を啜った