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出会いは衝撃的に(前半)

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「まあ、そのうち痛みも消えるだろうって、思っているんだ」
「……」
 浅野はかなり懸命に漕いでいるのだが、ボートはなかなか出発点に近づかなかった。湖の中央にロープで繋がれているような、そんな不安が兆して来る。或いは進行方向と逆の方向に、何か得体の知れない存在によって、引っ張られて行くような不安をも感じている。
「戻るときはなかなか進まないものだね。進む方向は間違えてない?」
 浅野は進行方向に背を向けている。振り向いて確認したいのだが、首が痛いのでそれはできなかった。
「大丈夫よ。頑張って」
 この状況は、人生にあてはめて考えることができると、浅野は思った。自らがどこへ向かっているのかも判らないまま、とにかく連続して進まなければならない。疲れたからと云って、一箇所に留まっていることは許されない。
 漸く桟橋が見えたとき、いつの間にか上空の雲は消え、恐ろしいくらいの黒い空に、夥しい星が美しくひしめいているのだった。この夜空を凝視め続けていれば、流星を見ることもできるだろうと、浅野は思った。だが、これから二人だけで一夜を共にすることになるのであれば、それどころではないという気持ちだった。



(後半に続く)