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出会いは衝撃的に(前半)

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「おい、後ろ向いて俺の顔を見ろよ。兄貴の前で土下座できねえのか?」
「首が痛いもので……そういうことでしたら、料金は結構です」
「そうかよ。物分りがいいじゃん!やっぱ、それがサービス業ってえもんよ。じゃあな」
 意外にあっさりと降りて行ったので、浅野は安堵した。
「すみません。東久留米まで行って頂けると助かるんですが……」
「こちらこそ助かります。どうぞ」
 チンピラたちが去ってドアを閉める前のことだった。乗車したのは普通の会社員という雰囲気の中年男性だった。これで踏み倒された金額の三倍の料金が約束された。ありがたかった。浅野は感動し、眼を潤ませながら車を出した。
 東久留米に着いたのは午前一時頃だった。駅前ですぐに乗客を乗せた。奇跡だった。東久留米から乗客を乗せたなどという話は聞いたことがない。大森までだと云う初老の男は、すぐに眠ってしまったらしい。今回の乗務で売り上げ金額の新記録を樹立することになる。
浅野はあのチンピラたちを乗せなければ、こんな幸運と遭遇することはなかったのだと思う。そして、「神」の存在を感じた。浅野は無神論者だが、今夜ばかりは神を信じるしかないと思った。