出会いは衝撃的に(前半)
背後のパネルの位置の調整がおわると、それらがオレンジ色に光り始め、そこからの熱が感じられた。「マイクロ波」ということは、電子レンジに似た仕組みで温めているのかも知れないと、浅野は思った。美絵は更に奥の方へ歩いて行き、姿が見えなくなった。
理学療法師は男性よりも女性のほうが多いようだった。男のほうが治療の効果は高いようにも思うが、浅野は美絵にマッサージをしてもらいたいと思った。しかし、事故の相手なので気まずいとも思う。
「浅野さん。読書をしていてもいいんですよ」
女性の理学療法師の一人が笑顔で声をかけてくれた。美絵よりも若い印象だが、平凡な顔の娘だった。
「そうですか。ありがとうございます」
浅野は活字を目で追うものの、その内容は把握できない。美絵は浅野の顔を見て気分を害されたために、早退してしまったのではないだろうか。彼女の自分への接し方は決して不親切なものではなかった。事情を考慮すれば当然なのだが、考えてみれば彼女の笑顔を、浅野はまだ一度も見ていなかった。
ところで、肩と腰を温めることは、マッサージの効用を高めるための手段として、本当に有効なのだろうか。そして、メインのマッサージも、本当に痛みを軽くすることができるのだろうか。
背後の機械からのアラームが鳴り渡ると、オレンジ色の光が消えた。
作品名:出会いは衝撃的に(前半) 作家名:マナーモード