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出会いは衝撃的に(前半)

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 浅野は診察室から出ると、廊下の長椅子に座って再び本を読み始めた。奥の治療室に呼ばれるまで、また長い待ち時間があった。夕方になってもまだ、多くの患者の出入りが続いている。
浅野の名が奥から呼ばれたとき、彼は度肝を抜かれた。それは、これまでの人生の全てを忘れさせるような、衝撃的な大事件だった。
 彼の名を素晴らしい声で呼んだライトブルーの制服姿の眩しい理学療法師の女性は、あの、驚異的に美しい村田美絵だったのである。
 一瞬、風呂上りではないかと思わせるほどのみずみずしさを感じさせる彼女の姿を見ると、浅野にはこれが現実とは信じがたいくらいだった。
「浅野さん。奥へいらっしゃって」
「……は、はい」
 そう返事はしたものの、どうしたことか立ち上がれない。
「浅野さん。腰が痛いんですね?」
「……は、はい。そうです」
 美絵は浅野が座っているところまで来て、彼の両腕を掴んだ。互いの顔が接近する。
「重症ですね。なるべく多く通ってくださいね」
 そう云いながら彼女は腕に力を入れて浅野を立ち上がらせた。