われてもすえに…
「殿、やはり失礼です。女子にはそういうことを思っていても口に出すものではありません」
「おっ。さすが大先輩だ。肝に銘じましてございます」
からかわれたとわかった喜一朗だったが、大人の対応、無視を決め込んだ。
「さて、殿。女子のことより作戦会議です。まずは?」
冗談を交わされた政信も、気を取り直し作戦を小姓に告げた。
「今から俺を呼ぶ時は『殿』はダメだ。『藤次郎』と呼び捨てだいいな?」
「わかりました。藤次郎」
「うん。藤次郎!」
小太郎の気分は主と出会った頃に戻っていた。
すると、先輩にたしなめられた。
顔は笑っていたので、お叱りではなかった。
「お前、またガキみたいな話し方に戻ってるぞ」
「あ。申し訳ありません」
政信もおもしろそうに小太郎に笑顔を見せた。
「悪くはない。お前らしいからな」
それから三人は話し合いを始めた。
いきなり姫に会わせろは下品、不作法、無粋極まりない。
そこで、その日は彰子に姫さまへの伝言を頼み引き下がることに決めた。
彰子を介し、どうにか会える機会を作る事にした。
日はいくらでもある。だから根気よく焦らずにやるという結論で、三人の会議は終了した。
早速、喜一朗が彰子に口頭で伝言をした。
姫に会いたい者が居る。それだけをまず姫に伝えてくれるようにと頼んだ。
「期待はなさらないでください。なにしろ、姫さまは塞ぎこんでばかりですので……」
「わかりました。よろしくお願いいたします」
藩邸探索一日目は中々の出来だった。