われてもすえに…
「どうです?お仕事は」
「正直言うとな、キツイ。かなりキツイ」
そう言った彼の声音から本当にキツイという様子が感じ取れ、小太郎は少し不安になった。
母上と、姉上の言葉は正しいのかな?
「なぜです?」
小太郎の質問に喜一朗は少し憂鬱そうに俯きながら答えた。
そんな自信がない様子を小太郎は見たことがなかった。
「……俺を殿は嫌っておる。話をまともに聞いてくれんくてな。逃げられまくって、浮船さまに怒られた。さっきもそうだ」
「……なんで?」
学問も、武術もすぐれている喜一朗がそんな扱いを受けているのが信じられなかった。
カッコいい先輩の悩む姿が、哀れだった。
「良鷹は良いみたいだな。さすが殿自らの御指名だけある。うらやましい……」
寂しげに言う彼が本当に気の毒になった。
「あの、喜一朗殿はどうして小姓に?」
「父上の命だ。……殿が次期藩主候補に一番近いから、今のうちに仲良くしておけと。だが、俺はそんな取り入ることはしたくない。本当に殿に心から従いたいと思えたら従う。だが、まだ日が浅いせいか、そう言う気持ちにまだならない。だから不安なんだ」
「……そうなんだ。難しいな」
「良鷹はどうだ?」
「え?好きですよ、殿。一緒に遊んでて楽しかったんで」
「あ、逃げてた時お前のとこにいたのか」
「そうみたいですね。ちょっと悪いことしたみたいですね。申し訳ありません」
「いや、うらやましい。俺も早く距離を縮めたいな」
「喜一朗なら大丈夫です!がんばりましょうね!」
「あぁ!一緒に頑張ろう。じゃあ、寝るか」
「はい」
小太郎は、これからの小姓生活に期待と不安を持ちながら、眠りについた。