われてもすえに…
「ん?俺が珍しいか?」
「別に」
「図体はでかいがガキみたいだな」
「ガキって言うな!」
初対面なのにずけずけと物を言う若者に若干いらだちを感じた。
「で、お前歳は幾つだ?」
「十……じゃなかった十八」
「俺と一緒か!奇遇だなぁ。茶でも一杯どうだ?」
「なんで?」
言葉通りのことが起こっていることがやはり恐ろしかった。
「良いだろ。暴れてのどが渇いた。行こう!」
その二人の様子に気がついた母が、小銭入れを小太郎に手渡した。
「……行きなさい。これで、お金払うのよ。お礼するの。いいわね?」
「……はい」
家族と別れ、小太郎は意気揚々と歩きはじめた若者に従い、茶店に入った。
「すみません。茶と、団子二つずつお願いします」
「はい。ただいま」
席に二人で座ると、目の前の若者は珍しそうに見渡した。
「こんなとこ初めてだ」
「へぇ。来たことないんですか?」
「あぁ」
「珍しいね。あ、お茶どうぞ。お団子も」
彼の前に置くと、また興味深げに口に団子を運んだ。
「美味い!」
彼の不思議な様子に、小太郎は興味がわき、質問をすることに決めた。
「この国の人じゃないんですか?」
「いいや。生まれも育ちもこの国だ」
「へぇ。なのに、来たことないんだ……」
その独り言を聞いたのか、若者は少し不満げに言った。
「出歩きたいんだけどさ、家のもんがうるさくてできないんだ。お前んとこは?」
「別にそこまでひどくはないけど……。最近出歩けなくなりました」
「イヤだよな。外で遊べないのって。息抜きさせろってんだ」
「確かに。言えてる」
しばらくたわいもない話を続けていたが、ここ何日も家から出られず、友達とも遊べなかった小太郎は楽しい時を過ごせた。
また、年上の者と面白おかしく話ができたことに内心少し驚いた。
普段なら先輩は後輩の小太郎たちを見下げ、話など聞いてはくれない。
敬語を使わないと生意気だといじめられる。
しかし、その中でも喜一朗は小太郎の中では別格だった。
帰りがけ、若者は小太郎に驚くべきことを言った。
「お前、気に入った。明日も会えるか?」
「……明日?……場所によるな」
「じゃあ、明日の朝、城の近くの川で待ち合わせだ。どうだ?」
「うん。それなら大丈夫」
若者は嬉しそうに小太郎に別れを告げた。
「じゃあ。またな!」
小太郎も彼に笑顔で返事を返し別れた。
「じゃあね!」
新たな知り合いが小太郎にできた。