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盟友シックス! -現実と幻想の狭間で-

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第9章 仙台を駆ける



府下大会出場の夢は地区大会一回戦ストレート負けで弾けた
まぁ、俺は悔しさなど微塵も感じてはいない むしろ開放感を感じていた
「さーって!何してあそぼっかなぁ!」
ただ俺には不安もあった
「あとは竜の事だけか…」
竜狩からいつも通り呼び出しの電話がかかってきて俺は学校に向かうことになった
その道の途中俺は青く澄んだ空を見あげてつぶやいた
「戦いが終われば…竜が全滅すれば元の生活に戻れるんだよな…?」

「今回はどこに行くんだ?」
「仙台だね 仙台牛食べたいな」
「お前にしては軽いこと言うじゃんか サクッと一狩行くか」

その時は何か違った
「…洞窟?」
「多分入れってことなんだろうけど… 立地がおかしいよね」
街のど真ん中、どう考えてもミスマッチな自然感マックスの洞窟がそこにはあった
「行ってみよう 逆に行くしかないさ」
山村が言って俺たちは入ることにした…

洞窟の中は6本の道に分かれていた
相談の結果それぞれが6本のうちどれかに行くことになったがおそらく竜と鉢合わせする時は一人だろう
「どこに竜がいるんだ…」
暗い中手探りで歩きながら俺はつぶやいた
「嫌な予感がするな… どう考えても俺が襲われるパターンだよなぁ」
なんとなくさっきから視線を感じるが怖いので振り返れずにいる
「グルル…」
なんとなく唸り声も聞こえるが怖いので振り向けずにいる
「グワッ!」
吼え声が響き俺が振り向くと同時に何かが俺に巻き付いてきた
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
完全に恐怖に駆られ声すらあげられずにいる俺にゆっくりとそしてしなやかに巻き付きながら見つめている顔があった
巻き付いてくる蛇のような胴体、そして見つめてくる16の眼…
「ヤマタノオロチってやつか…?」
俺は完全に蜷局(とぐろ)の中に取り込まれ動けなくなっていた
(お前が…竜に仇成す訳はなんだ?)
突然俺の頭の中に声が響く
「お前か?お前が話しかけているのか?」
(そうだが… 何か問題でもあるか?)
「いや、ない」
(ならば再び聞こう 貴様が竜に仇成す訳はなんだ?)
オロチは前より強く俺を締め上げる
「お前たちが俺たちの世界を荒らすから…ってのが建て前かな?」
(ふざけているのか?私は建て前など聞いたつもりはない)
さらに強く締め上げられ息が苦しくなってくる
「本当は竜狩にそそのかされたからかな? うまく口車に乗せられたのかもよ」
(貴様… 大義もなくまともな理由もなく我が同志たちを殺めたというのかっ!)
かなりの力で締め付けられて息が苦しいばかりか肋骨が軋みはじめる
(貴様のその刃で…どれだけの同志が苦しみ散って行ったか分かっておるのかっ!)
すでに息はほとんどできない状態で肋骨は悲鳴を上げている
(我らのいた世界は疫病によって死に瀕している 私たちはこの世界に希望を求めて来たのだ!それを貴様らが何の悪事も働いていない同志たちを殺していったのだよ!)
「お前たちは…ただ飛んだだけかもしれないけど地上では結構な被害が出てるんだよっ!俺たちの世界は、特に日本は竜と歩めるようにできてないんだ だから…さっさと帰ってくれよっ!」
(たわけがっ! そうやって頭ごなしに否定するから人間は自らの欲望で他の生物を滅ぼしてきたのではなかったかっ!)
オロチの締め付けは頂点に達し俺の体に激痛が走る
「ガハァっ!」
俺の肋骨が折れ、俺が血を吐く
(貴様は楽には殺さん、存分に苦しみを味わってもらうからな)
「うぁぁ… 痛い、イタイ、いたいぃ…」
(苦しめ、存分に苦しむがいい そして貴様には我が糧となってもらう)
「うぅ…長谷崎ィ…山村ァ…みんなァ…」
(フッ… そうやって来ることもない仲間の名を呼び続けるがいい)
(おい、首八つにニンゲン六人じゃ数が合わないぜ)
俺に話しかけていた首と別の首が言う
(奴らを全滅させれば好きなだけ喰えるんだ 今は気にしなくていいだろう)
「ぬぁぁ…まだだ、まだ終わらねぇぞ…」
俺は握っていた大剣の引き金を最後の力で引いた
カァンッ!
甲高い音が響き銃弾が天井で跳ね返り地面に転がる
(まだ抵抗するかっ!)
「うっうわぁぁぁぁぁぁっ!」
肋骨が完全に折れた状態でさらに締め付けられたのでもう俺の体は限界寸前だった
(あんまり砕くなよ 喰うとき歯ごたえなくなるだろ)
「フフ…ハッハッハッハッ!」
(狂ったか?)
なぜか俺は笑うしかなかった
(仕方あるまい 自らの死を悟ってなお正気でいろという方が無理な相談だ)
「頭哀れな竜どもだぁ!」
(なんだと!?)
「何が世界が死に瀕してるだぁっ!何が疫病だぁっ! この世界だって地球温暖化なんかでつぶれかけなんだよぉ! でもな、人類は自らの歴史の中で作り上げてきた英知で問題を解決しようとしてるんだよっ!」
俺はもう自分で自分が解らなくなっていた
「それがなんだお前らは! 人を石に変えてみたり水の中に閉じ込めることはできても自分たちの病気一つも治せないのかぁ?」
(言わせておけばっ!)
オロチは怒りながら俺を砕くつもりで締め付けに来ているはずなのに痛みはもう感じなかった
「俺を喰うなら喰えばいいさ!俺が死んでも後の5人がお前らをただじゃおくわけないんだからさっ!」
(ならば望み通り喰ってやろう!)
オロチが俺を放り投げ口を上に持ち上げる
後は自由落下で喉の奥に落ちるだけ…その時だった
バシュッ!
突然俺の真下にあった首が飛び、俺がオロチの体の上に落ちる
「何回喰われるつもりだお前はっ!」
そこにいたのはいつもの5人だった
「遅いぞお前らっ!」
自分でもわからないくらい暴走している自分じゃない自分が彼らに言う
「今治療するからっ」
素早く来村が治療に入る
(貴様か!我が兄弟を殺したのはッ!)
「さっき刀を投げたやつか?それなら俺だが?」
山村が竦むことなく答える
「気をつけろよ ある意味数的不利だ」
尾蔵が言う
「わかってるよ ホントにある意味だけどな」
(減らず口をっ!全員我らの糧としてくれるわぁ!)
「蛇肉ってのはまだ味わったことがないからね こんがり焼いてゆっくりと味わうことにするわっ!」
ブラックモードの長谷崎が舌なめずりしてオロチへと飛び掛かっていく
(我らを蛇扱いするとは生意気な娘めっ!)
「キ〇グギ〇ラを2~3頭くっつけたみたいなやつが喋ることかっ!」
(我らはキ〇グギ〇ラではない!どちらかと言えば日本書紀タイプの竜だ!)
「ほざくなっ!」
(言い出したのは貴様だろうにっ!)
オロチと長谷崎が激しい戦いを繰り広げる
「俺たちも忘れるなよっ!」
山村と犬射がそれぞれの首を牽制し、尾蔵が隙をついて首を落としていく
(ぬぁぁっ!?)
(くっ…無念…)
次々と首を落としてついにあとは俺に話しかけてきた奴と喰おうとした奴だけになった
(貴様ら…我が兄弟をっ!)
オロチの眼が怒りに燃える
「あんたがこっちを殺しに来るからこっちだって落とさなきゃならなくなるんだろっ!」
(我らには関係の無い話だ! 我らはこの世界を新たな住処とする、そして再び我ら竜の栄華を手にするのだっ!)
「そんな勝手な理由で殺されてたまるか!」