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ナガイアツコ
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novelistID. 38691
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異常気象、私は水の底で揺らめいた

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言い知れない悲しみがこみ上げ、瞼が熱くなった。
涙は止めどもなく湧き出てきているのだろうけど、
流れ落ちる端から水の中にまぎれてしまって、
悲しみ以外の感覚を感じることができない。

私はうつむいた顔を両手で覆って号泣した。
水の底の嗚咽はもごもごとした音を出すだけで、
そのことが更に悲しさを増幅させる。

頭の中は真っ白だった。
もう、どうすることもできず、
ただただ泣きながら、
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、
と唱え続けた。

ごめんなさい、ごめんなさい、
だから、お願い、助けて

突然、彼の机の上の電話が鈍い音をたてて鳴った。
私は受話器を取り、おそるおそる耳を澄ませた。
全神経を受話器の一点に集中させ、
そこから漏れてくる砂漠の風のような音に聞き入った。
ただの雑音?・・いや、水流音だ。


私は顔をあげ、蛇口をキュッと閉じて水を止めた。
目の前の鏡には、泣きはらした赤い目の自分が映っている。
私は濡れた顔をタオルで拭って、
鼻をチンとかんでから、鳴り響いている電話の受話器をとった。

受話器の向こうから彼の声が聞こえてくる。
これから一緒にお茶でも飲まない?と、
いつもの言い方、聞き慣れた彼の声。

うん、もちろん、すぐに行くね。
私は答えて電話を切り、
玄関のドアを開け、鍵を閉め、
軽やかにアパートの階段を駆け下りた。