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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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ツイン’ズ・アナザー-魔法使いになったら-

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 みなさんこんにちわ。え〜と、あたしの名前は珠瀬那々美[タマセナナミ]と言います。
 あたしは読書が好きですが、こういった文章を書くのは今回が初めてで、だいぶ戸惑っています。ですけど、どうしても文章にして残して置きたいことがあたしの身に起こったので、ここに書きたいと思います。
 みなさんは、テレビやマンガのヒーローに憧れたことってありますか? あたしはあります。実はあたし、初めて公表しちゃいますけど、魔法使いに憧れていました。
 本気で憧れてたので人に言うのが恥ずかしかったのですが、言っちゃいました。だって、これを言わないと話が進まないんですもの。
 実はあたし、ある日突然?魔法使い?になっちゃたんです。

 夢の中にあたしはいました。でも、夢の中にいる間はそこが夢だなんて、ちっとも思いませんでした。それが夢だと気づいたのは夢が覚めてからです。
 そこには茶色いウサギがいます。でも、このウサギ普通のウサギじゃありません。身長は耳まで入れるとあたしより高かったし、水色のジャケットにシルクハット、それにステッキまで持っていました。
 絶対変ですよね。でも、夢を見ているときは変だなんて思いませんでした。そのウサギに対して何の疑問も抱かなかったんです。
 ウサギはあたしの顔を見ると話しかけてきました。それも流暢な日本語でですよ。ウサギなのに変ですよね。あっ、見た目からして変ですね。
「やあ、こんにちは」
「こんにちわ」
 何であたしはウサギと挨拶なんてしてるんでしょうね。それも平然とですよ。
「キミさ、世の中ってつまんないなぁ〜って思ったことない?」
「え〜と、楽しいですよ」
「ふ〜ん。ボクにしてみれば世の中なんて、ウサギかそうでないかの2つに分けられるんだけど、キミどっち?」
「あたしはウサギじゃありません」
 今思うとちょっと変な会話ですね。でもこの後のウサギ質問があたしの運命を大きく変えてしまったんです。
「じゃあさ、こんな分け方もできるよね。魔法使いかそうでないか。キミはどっちだい?」
「あたしは、魔法使いにはなりたいですけど……」
「世の中の全ては2つに分けられるのに、なぜキミは迷うんだい?」
「あたし魔法使いになります」
「じゃあ、今からキミも魔法使いの方だね」
 ジジジジジ……という警報みたいな音が夢の世界に響きました。するとウサギは2本足でぴょんぴょん跳ねてどこかに消えてしまいました。
 あたしはウサギを追いかけて走りましたが、気づいたらベッドの上。つまり夢が覚めちゃったわけです。
 けたたましい音でうるさく鳴く目覚し時計を止めて、あたしはまたベッドの中に潜りました。ベッドの中はあったかくて出たくないんですよね。でも、今日は学校のある日なんです。
 あたし、高校2年生であと数ヶ月もすれば3年生なんです。憂鬱で仕方ありません。
 進路はいちおう大学進学っていうことになってるんですけど、何か先生とか友達に流されてそうなっちゃっただけで、どこの大学か決めてないし、本当に大学に行くのかもわかりません。
 それから、今日は学校に行きたくない理由がちゃんとあるんです。今日って2月14日なんです。みなさん、この日が何の日かご存知ですよね? そうなんですバレンタインデーです。
 日本では恋する乙女たちが好きな人にチョコをあげる日ってことになってますよね。実はあたしも恋する乙女なんてのになっちゃってチョコを用意しました。それも本命チョコって言われるやつです。
 バレンタインデーにチョコをあげるのも初めてだし、手作りチョコなんて初めて作りました。で、笑ってください、できたチョコレートの形――ハート型です。恥ずかしいくらいベターな形ですけど、だってそれ以外思いつかなかったんですよ。
 でも、チョコレートは用意したんですけど、渡す勇気がなくって。直接じゃなくてもいいんですよ、あのひとのバッグの中にこっそり入れたりでも。
 あ〜っ、でもあたしにはムリ。絶対ムリ、ムリ、ムリ、ムリ、ムリ!
 そんなわけで、学校行きたくないんです。
 ベッドの中であたしがうずくまっているとあ母さんが心配して見に来ちゃいました。あたし、学校無遅刻無欠席なんですよね。だから心配されちゃったみたいです。
 コンコンと部屋のドアを叩く音がして、ドア越しにお母さんが声をかけてきました。
「那々美、どうしたの? 起きているなら返事をしなさい」
「はぁ〜い」
「どうして朝食を食べに来ないの? 具合でも悪いの?」
「別にぃ〜」
「別にじゃないでしょ、顔を見せなさい」
 だるい身体を動かし、仕方なくあたしはベッドから這い起きてドアをちょっとだけ開けて顔を見せました。
 あたしの顔を見たお母さんは驚いた表情をしました。
「那々美! どうしたの顔が赤いわよ」
 すぐにお母さんはあたしのおでこに手を当てて熱を計りました。すると、またお母さんは驚いた表情をしました。
「すごい熱、今日は学校を休んで寝てなさい」
「ううん、学校行く」
「寝てなさい!」
「風邪とかじゃないから大丈夫」
「大丈夫ってあなた――」
 お母さんの言葉が終わらないうちにあたしはドアをバタンと閉めてしまいました。だって、本当に風邪とかじゃなかったんです。
 好きな人のことをベッドの中で考えてたら、身体が火照ってきちゃって……恥ずかしいことに顔が真っ赤になっちゃったんです。なんか情けないなあたし。
 学校に行くのは嫌だったけど、今までの学校生活を優等生ちゃんとして過ごしてきたので、そのプライドを守るためだけに学校に行くことを決意。
 パジャマから制服のブレザーに着替えるんですけど、毎朝めんどくだいですよね。だから、『自動的に制服に着替えられないかなぁ〜』なんて思ったんです。そしたら――。
「あれっ!? あたし何時の間に着替えたんだろ?」
 パジャマが制服に変わってたんです。そのときのあたしは『寝ぼけてたのかなぁ〜』って思ったんですけど、これが魔法だったんですよね。
 制服に着替え終わったあたしは眼鏡を探します。いつもの行事なんですけど、この日に限って眼鏡が見当たらない。たしか、いつもどおり机の上に置いといたんですけど、無かったんですよね。
「あっれ〜、おかしいなぁ。どっか別の場所に置いたっけ?」
 どこを探してないんですよね。
「こんなとき魔法が使えたら、はい、このと〜り手の中に眼鏡が……!?」
 あたしは目を疑いました。たしかに目は悪いですけど、こんなことが起きるなんてありえません。眼鏡が手の中にあるんです。
「うっそだ〜」
 何が嘘なんでしょうね。思わず言ってしまったのでわかりません。
 ここであたしは今朝見た夢を思い出しました。でも、まさか魔法が使えるようになったなんて、普通は信じられませんよね。
「な〜んちゃってね。ナイナイナイ、あり得ないよねぇ〜」
 自分を落ち着かせるように言いましたが、事実眼鏡は手の中に突然現れたわけですし、ちょっと試しにあることをやってみました。
「テレビよ〜、つけ!」
 ――つきました。テレビの電源が入っちゃいました。驚きです。
 テレビを見ながらあたしは思わず固まってしまいました。身体は止まってますけど、頭の中はパニック状態です。