帯に短し、襷に流し
衣替え
そろそろ四半世紀、仕立て屋をやっているが、わからないことのほうが多い。
「袷」「単衣」は、仕立て方の種類だと書いたが、実は、衣替えの名称でもあったのだ。と、言うことを、昨日知った。
洋服の衣替えは、2回。6月と10月。南西諸島では、5月と9月。
和服の衣替えは、4回。
6月1日から6月30日までは、「単衣」。7月1日から8月30日までは、「薄物」。9月1日から9月30日までは、「単衣」。10月1日から翌年5月30日まで、「袷」。
これを、3回。と数えたりもするけれど、よくよく見ると、切り替え時は4回。6月、7月、9月、10月。「単衣」、「薄物」、「単衣」、「袷」と替えていくのだそうだ。
見ただけで、面倒くさい。
その前後で、2週間ほどの移行期間というのがある。
気候というのは、ある日突然、その日を境にきっぱりと涼しくなったり暑くなったりするものではない。
だから、移行期間がある。気候の問題以外にも理由がある。
単衣から袷、あるいはその逆の場合、箪笥から調度品まで、ありとあらゆるものをそっくり入れ替えたのだそうだ。それを一日でやってのけるのは、劇的な変化で、想像するだに大変なことである。
ところが、「薄物」と「単衣」なんか、コートを着るか、オーバーを着るかの違いじゃないのか? と思う。
いや、夏だから、カーディガンを着るか、ジャケットを着るかの差か?
何にしても、温度変化に合わせて、それに合わせた格好をすればよいので、5月にも30度近い気温で袷を着なければならないということは無いのだ。逆に、7月にして、最高気温18度で、薄物なんて見た目も寒い。
衣替えとは、そもそも、日本の移り変わる美しい四季とともに、気温の変化に人のホメオスタシスが届かないところを衣服で補完するための一つの行事ごとなのだ。
杓子定規に、9月は薄物なんかもってのほかだっ!
8月なのに、合着とはなんたることか!
と、声高に申す方々もいらっしゃいますが、気温にあわせて着たら、いいじゃないの?
良い着物生活を。
2012.7.23 8:51
2012.8.29 加筆
2014.9.7 加筆修正
2014.11.24 加筆修正