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帯に短し、襷に流し

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***着物 とは***



 着るものすべてを指す言葉である。
 それがあるときを境に、日本が連綿と受け継いできた衣服文化の着衣部分を指すようになった。
 いわゆる、和服 というやつである。
 
 そう遠くない昔。
 貴重な財産であった「布」に対する、日本人の尊敬の念はとても高く、
 「ハレの日の着物」は、村総出で着まわしたりもした。

 母の晴れ着は、娘に受け継がれ、孫が着て、ひ孫が生まれて。母の振袖の袖を留めた残りから、赤ちゃんの晴れ着を縫うことは、ごく普通でもある。
 裾や袖、衿が汚れ、よれよれになると、切って仕立て直す。
 切り落とされたハギレは、蝋燭の芯になったり、行灯の芯にしたり、焚き付けに使ったりした。
 また、違う着物のつぎあてに使ったりすることもあった。
 やがて、つんつるてんになって、小さくなった着物は、子どもものに仕立て直され、それも出来なくなると、布団のガワになったり、座布団になったり。
 そのころになると、もはや、継ぎ接ぎだらけで、元の布なんてあるのか無いのかも分からない。それもよれてくると、雑巾になった。
 雑巾でも用を足さなくなると、お寺さんが引き取って、それをつなぎ合わせ、継ぎ合わせて、袈裟にするのだ。
 そうした布は、たいそう尊いものとされた。

 いまや、大量消費、大量生産、大量破棄の時代に突入。生地は、消耗品であり、受け継がれるべき「財産」ではなくなった。
 であるから、昔の知恵が顧みられることなく、また、その創意工夫は貧乏ったらしく、奇異に映ることすらあるのだ。
 
 当たり前。とは、今ある環境にとって大多数が同意できるものであるから、過去の遺物は当たり前にはならない。
 とても、とても寂しいことではあるが。

2014.11.23 加筆
作品名:帯に短し、襷に流し 作家名:紅絹