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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼第二部・第二回】星が丘

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肩にタオルをかけた緊那羅が縁側に座って空を見上げる
広がる星空
少し肌寒い風が風鈴を鳴らすか鳴らさないかの強さで風呂上がりでほどいたままの緊那羅の髪を撫でた
まだ濡れているせいかサラサラとは靡かずに数本だけが風に弄ばれる
京助を待っていたときにも考えていたことをまた考えてしまう
過去の自分だった【操】のこと
「京助は…操と一緒の方が…笑えていたのかな…」
小さく呟く
比べたって比べられないとわかっているのに
わかっているはずなのに
「緊那羅?」
呼ばれて慌てて振り返るとタオルが庭に落ちた
「き っしょう…; っ…びっくりしたっちゃー;」
中島から借りたジャージを着たままのヨシコが緊那羅に歩み寄る
「隣いいかしら」
「あ…うん」
緊那羅が少し横にずれるとヨシコが座った
「なんだっちゃ? それ」
「これ? 何かね柚汰がくれたの。眉毛を見つけるといいことがあるから食べろって…食べる?」
ヨシコがコアラのマーチを緊那羅の前に差し出す
「柚汰って…誰だっちゃ?」
聞きなれない名前に緊那羅がヨシコに聞き返す
「えっ…と…ゆーちゃんっていった方いいのかしら? そうよゆーちゃんのこと」
「中島…? がくれたんだっちゃ?」
「うん…くれたの」
コアラのマーチを両手で持ったヨシコが眉を下げて微笑んだ
「…ねぇ緊那羅…もし…もしもよ? いいことが…たとえば願い事とかが叶うなら…何をしたい?」
「願い事…だっちゃ?」
「そういいこと…緊那羅ならどうする?」
いきなり聞かれ緊那羅がきょとんとしてヨシコを見る
「私…は…」
緊那羅が何気なく視線を下に向けるとさっき庭に落ちたタオルがあった

白いタオル
【操】の形見のタオルと重なる
それを拾うとぎゅっと握って空を見た
「緊那羅」
「えっ? んぐ;」
ヨシコに呼ばれてそちらを向くと口に押し付けられた何か
「食べて」
それは一つのコアラのマーチだった
緊那羅がコアラのマーチをかじるとヨシコも一つ口に入れる
サクサクという音がやがて消えると虫の声と家の中から悠助の元気なおやすみなさいが聞こえてきた
「眉毛とかいいんだっちゃ?」
「…うん…」
ヨシコがコアラのマーチの箱を撫でる
「いいこと…あったから」
「え…? いいこと…あったんだっちゃ?」
ヨシコが笑って頷く
「名前…わかったの。柚汰って名前…ゆーちゃんじゃないわそうよ柚汰。いいことじゃない? そうよ嬉しかったもの」
「そう…だっちゃね」
緊那羅も微笑んだ
「ヨシコー!! こらヨシコどこいったんきに;」
ヨシコを探す阿修羅の声を聞いて緊那羅とヨシコが顔を見合わせて笑った