「レイコの青春」 40~最終回
「まだ単位も残っていることだし、
予定通りに行けばと言う見通しだけなのよ。
あくまでも、先のことは未定だから・・・。」
「大丈夫、レイコならやる遂げるわよ。
最大難関のピアノをクリアしたんだもの。
あとの、レポートと筆記試験だけなら、もう、卒業したも同然だわ。
そしたら盛大に盛り上がろうよ。
園舎も完成したことだし、
その先で、レイコが保母になったら、
お祝いに、ぱあ~っと、
若いものたちで盛り上がりましょう!。」
「・・・じゃぁ何かい?
あたしゃ、年寄りだから、そのお祝いのお花見とやらには、
呼んでもらえないということかい?
やれやれ、今時の若い者は、
喉元を過ぎると、
実に薄情、この上ありませんねぇ。」
「・・・あら、八千代お母さん・・・
いつから、そこへ。」
「ず~と、最前より、ここにおりました。
あ~あ、やっぱりあん時に、出資した300万円をポンと返してもらって
こんな薄情な若い娘っ子たちとは、縁を切っておけばよかった。
私もずいぶんと蒙麓(もうろく)をしたねえぇ・・・
可愛い飼い犬に手どころか、
足まで噛まれちまうとは、まったくもって情けない。
渡る世間は鬼ばかりだ。
やだねぇ~、まったく。」
「あっ、いいえ・・・
けして、そう言う意味ではありません。
ただ、このあたりで、若い人たちの慰労も兼ねて、
たまには、パッと騒ぐのも必要かなと・・・
ただそんな風に考えただけで、変な他意などありません。」
「解っていますよ、そんなことくらい。
実際、ここまで辿り着くまでには、
あまりにも、実に色々な事が有り過ぎました。
あんたらは、・・・実によく頑張ったねぇ。」
仲町の母が、目を細めて
遠い昔を思い出し始めたようです。
作品名:「レイコの青春」 40~最終回 作家名:落合順平