「レイコの青春」 40~最終回
「いいですねぇ、それっ。
一度は私たちのカンパを断った市長さんに、これでどうだと、
目いっぱい、突きつけてあげましょう!」
「陽子さんったら・・・
公務員がそんな過激なことを言ってもいいの?。
市長さんを敵に回したら、あとで、大変なことになるんじゃないの。」
「いいえ、
私は今日は、有給休暇中ですので、
立場は、皆さんとまったく同じ、桐生市の一般市民です。
八千代お母さんも、ぜひ一緒に行きましょう!
市長さんがどんな顔をしてみせるのか、
いまから、とっても楽しみです。」
「あたしゃ・・・行きませんよ。」
「ええ、どうしてぇ・・・
お母さんが一緒に行ってくださると、
皆さん、必ず帰り際には、
これで、お母さんと美味しいものでも食べてくださいと
言って、必ずポケットマネーが頂けるのに・・・
私、それがとっても、楽しみだったのに。」
「陽子さん。
それって、動機が不純すぎるわよ。
会計担当とは、とても思えない不適切な発言だわ。」
「どうして?
別に、いいんじゃないの。
余計にもらえるだけで、大助かりだもの、
別に問題はないと思うけどなぁ・・・私としては。」
「いいから、あなたたち、
若いものだけで行ってらっしゃい。
それは、あなたたたちがこれまで頑張ってきたことの
当然といえる成果です。
それにいまさら・・・
あの市長のおいぼれた顔などは、とても見たくはありません。
あれでも、あたくしが面倒を見ていた頃には、
仲町でも、1番か2番目を競うほどのいい男でした。
昔の映画俳優みたいに、端正な顔をしていたくせに、
偉くなると、人相まで変わってしまいます。
・・・・長年の恋から、冷めたくなんぞはありません。
若くて、格好良くて、みんなに好かれて
わたくしまで夢中になってしまった、あのいい男も、
今ではすっかりと、老いぼれて、老けきってしまったようです。
八千代は元気ですとだけ、市長さんに伝えておくれ。
さあ・・・もういいからみんなで
行っといで。」
「はい、解りました。
女が大切な用件でおもむくときには、
乳首が、天を向くまで、
しっかりと胸を反らして、
背筋を伸ばして歩くんですょ、ね。
いい女には、なによりも、その姿勢が大切です。」
「その通りです。
陽子さんも、なかなかに分かってきたようです。」
笑顔の八千代母さんを一人残して、
幸子の車へ、レイコと美千子、そして陽子の3人が
相次いで乗り込みました。
作品名:「レイコの青春」 40~最終回 作家名:落合順平