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龍虹記(りゅうこうき)~禁じられた恋~・其の三

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 右脚をしきりにさすっているのを見、嘉瑛が覗き込む。
「そんなに痛むのか、どれ、見てやろう」
 嫌らしげな眼で見つめ、着物の裾を捲ろうとする。
「私に触るな!」
 千寿は悲鳴のような声で叫んだ。毅然として頼んだつもりだが、現実には哀願しているような響きになってしまう。
「鬼ごっこは、もうそろそろおしまいだ。俺も子どもの遊びに付き合うのは飽きたんでな」
 嘉瑛が淡々と言う。
「千寿、俺はお前に言ったはずだ。俺の側から黙っていなくなるなと。お前は俺の妻でありながら、俺を裏切った。その罰がどのようなものか、覚悟はできておろうな」
 一転した冷たい声音は、まるで魔界から響いてくる死者のもののよう。
「―!」
 千寿は恐怖に顔を引きつらせ、身を退く。
 そんな少年を、嘉瑛は捕らえた獲物をどう料理するかを思案するような眼で実に愉しげに眺めている。
 また、捕まってしまった―。
 千寿は奈落の底に突如として突き落とされたように、眼の前が暗くなった。
 これからどのような目に遭わされるのかと想像しただけで、この場で舌を噛み切りたいとすら本気で思った。